資産6,000万円超で「もう我慢する必要ない」
高橋一郎さん(仮名・65歳)は、長年勤めた会社を定年退職。その日が来るのをずっと待っていました。
高橋さんのピーク年収は1,000万円。役職定年と共に750万円に減り、60歳からの継続雇用時には450万円ほどになりました。モチベーションを保つのは大変でしたが、それでも60歳でリタイアはさすがに早すぎる、周囲もみんな働いているし……。そう思い65歳までは働き続けようと考えてきたのです。
晴れて退職した後、高橋さんの手元には6,000万円を超える資産がありました。これは自らつくった貯蓄、退職金の残り、そして定年の少し前に親から引き継いだ相続分です。
「老後2,000万円」といいますが、そうであれば、その3倍。しかも、夫婦合わせて月23万円ほどの年金も入ってきます。
仕事も子育ても終わり、夫婦でこれまで頑張ってきたご褒美に多少贅沢してもいいだろう。長く続く老後に向けて家もリフォームして、車も買い替えて、海外旅行や温泉旅行にも行って……。
退職の解放感と手元に大きなお金があることで、金銭感覚が少しずつ狂っていった高橋さん。お金を理由に我慢する必要がないことは、なんともいえない優越感でした。
どんな場面でも、お金を使うほど良いサービスや接客を受けられることで、行動はエスカレート。なかでも夫婦がお金をかけたのが食事です。星がつく有名店に赴き、何度も行って常連扱いされることやみつきに。
デパートでも美味しそうな総菜やスイーツを見つけては買って帰ります。そうした流れでワインにもハマりました。
時間もお金もある上に、好奇心旺盛で元気いっぱいな夫婦。誰もがうらやむ暮らしといえるでしょう。とはいえ、当たり前に資産は減少していきました。それでも夫婦の欲望は止まりませんでした。
好きなように生きた結果失った「お金より大切なもの」
そんな生活を数年間送ってきましたが、ある日終焉を迎えます。制限せず好きなものを食べる生活を送った結果、高血圧と糖尿病になったのです。
「糖尿病は恐ろしい病気です。このままの生活をしていたら大変なことになりますよ」
医師に諭された高橋さん。我慢をせずに老後を満喫した結果、あっさりと病院通いの余生になったのでした。
健康がなければ何も始まらない。それはわかっていたのに……。もし病気にならなくても、そのままいけばお金を使い果たしてしまった可能性もありました。どちらにしても不幸だったと、目が覚めた高橋さんは後悔しきりです。
「お金を使わないと満たされないような、妙な高揚感の中にいたんです。本当に馬鹿でした」
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