頭のいい人は気づいている…メディアが報じる「ロシアがウクライナを侵略した」に隠された意味【ドラマ『ドラゴン桜』の脚本監修者が解説】

頭のいい人は気づいている…メディアが報じる「ロシアがウクライナを侵略した」に隠された意味【ドラマ『ドラゴン桜』の脚本監修者が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

言葉は、私たちが世界を理解し、他者とコミュニケーションを取るための最も強力なツールです。しかし、その力を最大限に引き出すためには、言葉の持つ意味やニュアンスを深く理解する必要があります。本記事では、西岡壱誠氏の著書『東大視点 ものごとの本質を見抜くための31の疑問』より一部を抜粋・再編集し、日常的に使う言葉の中に隠された意味や、類似語との違い、さらには異文化間での言葉のズレなど、知っておくと理解度がグッと深まる言葉の教養を紹介します。

「ロシアがウクライナを侵略した」…言葉に隠された意味とは?

ん? そのままの意味だと思いますよ。隠された意味なんてありますか?

 

2022年から始まった、ウクライナとロシアの間の戦争。2024年現在、この戦争は終結していません。依然として終わりに向かう気配が一向になく、予断を許さない状況にあると言えます。そんなウクライナとロシアの戦争に関するニュースで、こんな言葉が使われていました。

 

「国際連合は、ロシアがウクライナを侵略したことについて……」

 

たったこれだけの言葉ですが、実は国連がこの戦争をどのように捉えているのかがここに表れているのです。

 

領土や首都の攻め合い・奪い合いに関する表現として、「侵略」と「侵攻」という2つの言葉があります。英語で言うと、侵略が「aggression」で、侵攻が「invasion」ですね。漢字にすると「侵」が同じ言葉なので、「侵略」も「侵攻」も同じようなものでしょ?と感じてしまう人がいますが、実は意味が少し違うのです。ご存知でしたか? 

 

「侵攻」は、単に相手の領土に攻め込むことを指す言葉です。それに対して、「侵略」の方は、相手の政治的な独立や主権を「侵す」という意味になります。

 

侵攻は「ただ相手側に攻め込んだ」という行為そのものを指す中立的な言葉なのですが、侵略は侵略した側に非があると判断した場合に使う言葉だということです。要するに、「侵略」を選んで使ったということは、国連がロシアを非難しているということなのです(これは国連による1974年の侵略の定義に関する決議を基にしています)。

 

ウクライナの問題について、最初は、国連は「ロシアがウクライナを侵攻した」というように、「侵攻」という言葉を使っていました。でもある時期から、「ロシアによるウクライナの侵略である」という言い方がされるようになりました。これはおそらく、事実確認をして協議し、「ロシアの侵攻には正当性がない」と判断したから、「侵略」という言葉を選ぶようになったと考えられます。

 

侵略という言葉は国際政治上重い意味合いを持っており、それでも「侵略」を使っているということは、今回のウクライナ戦争に対して、国連はロシアに対し非難する立場を取っていることがわかります。

 

言葉の選び方ひとつで、伝えたいニュアンスを大きく変えられる場合があります。逆に何気なく言葉を選んでも、他の人から「この言葉を選んだということは、こういうニュアンスなのかな」と解釈されてしまう場合もあるでしょう。

 

Point

・同じような意味の言葉でも、どれを選ぶかで、ニュアンスが変わることがある

・「侵攻」は、「ただ相手側に攻め込んだ」という行為そのものを指す中立的な言葉

・「侵略」は攻め込んだ側に非があると判断した場合に使う言葉で、非難するニュアンスがある

 

 

西岡 壱誠

株式会社カルぺ・ディエム

代表

 

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※本連載は、西岡壱誠氏の著書『東大視点 ものごとの本質を見抜くための31の疑問』(幻冬舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

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