「65歳まで働かなきゃ」が一転、60歳で余裕の退職
田中和男さん(仮名・60歳)は念願の定年退職を果たし、身も心もはればれとしていました。大学を卒業してからここまでよく働き続けた、これで自由だ―――。最終出社日、同僚に挨拶を終えると、颯爽と帰路につきました。
田中さんは決して器用なタイプではなく、営業の成績は常に中ぐらい。ストレスにも弱いタイプで、「仕事が楽しい」と思ったことはほとんどありませんでした。
コツコツ働き、58歳時には年収520万円、貯金は1,800万円、ローンはなし。少ない貯蓄ではありませんでしたが、退職金制度のない会社であることが大きな不安でした。
「独り身だし、誰も助けてはくれない。嫌だけど65歳まで働くしかない」
そう思っていたのですが、まさかのことが起きたのです。
それは若い時に大喧嘩をして以来、絶縁状態にあった父からの相続です。母はすでに死去しており、田中さんは一人っ子。父に資産があることも知らなかったのですが、父は亡くなる前に、自分宛の遺言書をきちんと残していたのでした。
手続きにかかる諸経費、税金を差し引いても3,000万円弱が転がり込んできた田中さん。突然老後への不安はすべて消え去りました。
「ありえない幸運だ。65歳まで働く必要なんてない、60歳できっぱり辞めよう」
こうして、晴れて60歳で退職。少し早く訪れた老後を悠々自適に過ごせるはずでした。しかし、お金を手に入れた田中さんに変化が現れたのです。
