新しく人を採用する際、企業側は学歴や経歴を参照します。しかし、本来よりもより良い自分に見せようと、過去を詐称する人は少なくないといいます。今回は、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニアである東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)代表取締役社長の福留拓人氏が、経歴詐称にみられる2つの特徴と見破り方について解説します。
学歴重視主義の復活とともに増加する「経歴詐称」…ウソの履歴書で転職を目論む人の実態【人材のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「日本の有名大学卒業」「海外の大学卒業」学歴詐称の主なケース

学歴を良く見せようとする人の特長として、次のようなものがあります。まず東京六大学を中心とする有名大学卒業を詐称すること。次に海外の大学卒業を詐称すること。この2つのケースに学歴詐称は集約されています。

 

なぜそういうことが起きるのでしょうか。詐称した人を擁護するわけではありませんが、学歴を良く見せたいのにはいくつかの要因やそれなりの背景があります。

 

人は誰しも昔に遡ることはできません。後悔先に立たずといいますが、学生時代にあまり勉学に打ち込まなかったけれども、社会に出る段になって学歴が必要だと痛感する人もいます。学歴がないと挑戦さえできないような企業や団体を目指すにあたり、思わず学歴詐称をしてしまうという事例があります。

 

それから非常に多いケースですが、立派に仕事をしていて能力も実績も申し分ない、学生時代に比べてキャリアを飛躍的に昇華させる人もいます。そういう人は、それまでは気にならなかったけれども、活躍できている現在の環境になると、自分の周りにいつしか高学歴の先輩や同僚が集まるようになります。

 

そこで、以前は感じていなかったコンプレックスをふとしたきっかけで意識するようになることがあります。そして、自分の学歴に負い目を感じるようになり、いつしか学歴詐称するようになってしまうのです。

 

本来なら能力や実績はすでに高く評価されているので、その上に詐称する必要などないのですが、周囲に引きずられるように自分を偽るようになってしまうわけです。これは心理学上の要因としてインパクトが強いと思われます。

 

中卒や高卒でも立派な仕事をして、学歴社会の重圧をはねのけ、思う存分に活躍している人もいます。最初は反骨心がモチベーションとなり、実績を上げるエンジンになっていたはずなのに、周囲と肩を並べるうちにコンプレックスを感じてしまい、大卒を偽るようになるような事例もあります。

 

一般的に中途採用で学歴を開示するのは転職時のみに限られます。しかも自分の履歴書に記載するだけです。新卒入社では社会人経験がないので、卒業証明書の提示を求められることが一般的です。

 

ところが中途入社の場合、最終学歴の卒業証明書を提示するように指示されることはほとんどありません。つまり、多くの場合、あくまでも自己申告なのです。

 

東京大学でも1学年に3,000人以上、早稲田、慶応などになると言うに及ばず、さらに多くの学生が毎年卒業してきます。学部、所属ゼミ、そんなところまで遡って数十人の同期生、学友、先輩、後輩に当たる確率は非常に低いわけです。

 

そうなると詐称をしていても、それを表面的に見破ることは難しいのです。工学系とか特殊な世界であれば別かもしれません。理系の人が文系を詐称すると、話していて何かニュアンスが伝わらないという場合があります。

 

ですが、いろいろな情報がメディアに出てくる早稲田大学を卒業したと言っても普通はわかりません。もちろん調べようと思えばいくらでも調べられるのですが。

 

そして、海外の大学となるとさらに卒業生が少なくなります。アメリカには日本と比べものにならない数の大学があります。日本人学生が数人しか在籍していない大学もあります。そのあたりを卒業したと言っても、誰もわからないというのが現実です。

 

就職先で英語が使われるのであれば英語力に違和感が出るかもしれませんが、普通は海外の大学を本当に卒業したかどうかまでわかりません。本人の申告を信じるしかないのです。卒業時期も在学年数も日本の大学とはスケジュール感が違いますから、余計にわかりにくくなります。ということで「海外の大学卒業を詐称しても露見しないだろう」と虚偽の申告をする方は一定数いるようです。