●トランプ氏の大統領就任直後の政策は、2025年の金融市場の行方を左右する最重要ファクター。
●日本は3月までの予算動向に注目、与野党対立で予算案否決などの事態となれば衆院解散も。
●日米とも、緩やかな金融政策変更で株価への影響は軽微、企業自身や市場の業績予想に注目。
トランプ氏の大統領就任直後の政策は、2025年の金融市場の行方を左右する最重要ファクター
今回のレポートでは、市場で注目される2025年1-3月期の重要イベントを整理します(図表)。米国では1月20日にトランプ次期大統領の就任式が控えていますが、トランプ氏は就任後早々、不法移民対策に着手し、化石燃料の採掘増や温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの再離脱に動くことが予想されます。また、トランプ氏は不法移民や麻薬密輸を取り締まるため、就任初日に中国とメキシコ、カナダに新たな関税を課すと述べています。
弊社は米関税引き上げについて、中国には一定程度実施されるものの、他の国とは個別交渉の可能性が高いと考えています。トランプ氏は選挙期間中、インフレはバイデン氏の失策と批判してきた経緯もあり、インフレの副作用をはらむ関税の引き上げは、慎重に判断するとみています。ただ、想定を上回る関税引き上げのリスクはあるため、就任直後のトランプ政策は、2025年の金融市場の行方を左右する、1-3月期の最重要ファクターと思われます。
日本は3月までの予算動向に注目、与野党対立で予算案否決などの事態となれば衆院解散も
一方、日本に目を向けると、政府・与党は3月までに2025年度予算や税制改正関連法などを成立させたい意向ですが、昨年12月に決定された与党税制改正大綱では、「年収103万円の壁」を123万円にする方針が明記され、178万円への引き上げを求めた国民民主党との協議は打ち切られました。少数与党では国民民主など野党の協力なしに衆議院で法案を可決できないため、2025年度予算の成立が見通しにくくなっています。
年収の壁の引き上げについては、2025年度の税制改正関連法案で178万円へ修正される可能性は残っており、その場合の減税規模は約7.6兆円に達するなど、日本経済や日本株に強い追い風となるため、今後の動向が注目されます。なお、与野党の対立が深刻化し、2025年度予算案の否決や内閣不信任決議案の可決といった事態になれば、石破茂首相が選択肢との認識を示した衆議院の解散も想定され、日本市場にはネガティブな展開となります。
日米とも、緩やかな金融政策変更で株価への影響は軽微、企業自身や市場の業績予想に注目
金融政策について、弊社は日銀が春季労使交渉(春闘)のモメンタム(勢い)や、トランプ氏の就任直後に実施する政策を確認した上で、1月に追加利上げを決定し、米連邦準備制度理事会(FRB)は不確実性に備えた慎重な政策運営を継続し、3月に追加利下げを決定すると予想しています。いずれも緩やかなペースでの政策変更のため、日米株式市場への影響は限定的となる一方、ドル円相場は思惑で上下しやすい展開が続くと思われます。
日本株は1月下旬からの決算発表で、企業による今年度の業績予想の上方修正が顕著にみられるか否か、3月中旬の春闘の集中回答日で、賃上げのモメンタムが維持されるか否かが、当面のカギになると考えます。米国株は市場が予想する2025年の主要企業の1株あたり利益(EPS)が、引き続き良好な数字となるか否かが注目されます。2025年の金融市場は、これらの重要イベントを無難に通過できるかが、まずは最初の焦点になるとみています。
(2025年1月7日)
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『金融市場で注目される「2025年1-3月期」の重要イベント【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト