「今年の漢字」は過去4回の選出歴を持つ“金”!選ばれたワケ
日本漢字能力検定協会は「いいじひとじ」の12月12日に毎年、その年1年の世相を表す「今年の漢字」を発表しています。一般の人が投票し、多く票を集めた漢字一文字が選ばれるものです。
「今年の漢字」はそのときどきの景気局面や経済状況を反映する傾向があります。景気がよく明るいムードが社会に満ちている年は、「愛」「安」などの明るい意味の漢字が選ばれる傾向にあります。金融不況のような景気の悪い年は「倒」「毒」などの暗い意味の漢字が選ばれる傾向にあります。
24年の「今年の漢字」は「金」になりました。「金」は5度目の選出です。前回夏のオリンピック東京大会が開催された21年『今年の漢字』も『金』でした。オリンピック・パラリンピックで日本選手が活躍し多くの金メダルを獲得したことや、大谷翔平選手がメジャーリーグを舞台にベーブ・ルース以来のリアル二刀流での大活躍でMVP獲得という金字塔を打ち立てたことなどが選ばれた理由でした。
日本漢字能力検定協会はHPに、「5回目の『金』が示す、 “光”の「金(キン)」と“影”の「金(かね)」と題して24年の今年の漢字に「金」が選ばれた理由をまとめています。
“光”の「金(キン)」の主な理由として、
1.数多くの「金」メダル獲得に沸いたパリオリンピック・パラリンピック
2.大谷翔平選手が50-50達成と3回目のMVP獲得で値千「金」の活躍
3.佐渡「金」山が日本で26件目の世界遺産に登録
4.20年ぶりに新紙幣が発行されたこと
が話題になったことを挙げています。
一方、“影”の「金(かね)」の主な理由として、
1.政治とカネ・裏「金」問題などで政局が大きく変わり、衆議院議員選挙で与党過半数割れ
2.全国で闇バイトによる「金」目当ての強盗事件が多発し、多くの国民が不安に
3.物価高騰が家計を圧迫していること
を挙げています。
夏のオリンピック開催年は、調査期間直前に新潟中越地震があった04年の「災」、リーマンショックがあった08年の「変」のようにショッキングな出来事が発生すると別の漢字になりますが、そうではない年は、夏のオリンピックで日本選手が活躍し多くの金メダルを獲ることは国民の大きな関心事になりやすく、開催年は、「金」が選ばれる可能性が大きいと思われます。
なお、24年の今年の漢字のランキングをみると、第3位に50-50達成と3回目のMVP受賞と大活躍だった大谷翔平選手の名前から「翔」が選ばれました。
一方、悪い意味の漢字として、正月の能登半島地震や各地の豪雨被害など天災が多かった年から「災」が第2位、「震」が第4位と上位に入りました。
「新語・流行語大賞」から姿を消した「コロナ関連用語」
24年の「新語・流行語大賞」の年間大賞には「50-50」ではなく、「ふてほど」とドラマのタイトルの略称が選ばれました。21年の大谷翔平選手の「リアル二刀流/ショータイム」、22年の史上最年少でセ・リーグ三冠王となった「村上様」、23年の阪神・岡田彰布監督の「アレ(A.R.E.)」と3年連続野球部門から選ばれていましたが、4年連続選出にはなりませんでした。
また、20年から新型コロナウイルス関連用語が選ばれていました。20年ではノミネート30語の半分の15語で、大賞は「3密(3つの密)」でした。21年は6語、22年は2語、23年は2語と4年連続コロナ禍関連用語が選ばれていました。しかし、4年ではゼロとなり、コロナ禍の影響が小さくなり、国民の注目が薄れたことがわかります。
セ・リーグ優勝チームと日銀短観・大企業・全産業・業況判断DIの意外な関連性
24年調査でプロ野球チームの中で好きなチームは、第1位が巨人(15%)でした。質問が定例化した92年以来33年連続第1位となりましたが、23年より2ポイント低下しました。第2位は阪神(10%)です、23年に「アレ」を達成したことで2ポイント上昇しました。「興味はあるが好きなチームはない」が20%で、「興味がない」が27%でした。
好きな球団の優勝は、ファンの消費マインドを高めるなどの効果があります。人気球団の場合、他の球団に比べファンの数が多いので、その影響力も大きいと思われます。
1973年以降2024年までの52年間で、その年のセ・リーグの優勝チームが決まった直後の調査である、日銀短観・大企業・全産業・業況判断DI・12月調査の前年差変化幅の平均は0.0ポイントです。大企業・全産業・業況判断DIを使うのは、1973年ではまだ、中小企業・業況判断DIがなかったためです。人気球団の巨人の優勝年では改善9回・不変1回、悪化10回ですが、前年差変化幅の平均は+5.7ポイントの改善です。
人気2位の阪神の優勝年では改善が3回・悪化が1回ですが、前年差変化幅の平均は+3.3ポイントと改善です。残る4球団の優勝年の平均は▲4.7ポイントの悪化、改善が12回、悪化が15回になります。
セ・リーグの人気チームが優勝した年のほうが、平均的にみて日銀短観・大企業・全産業・業況判断DI・12月調査の前年差変化幅がよくなる傾向があります。
なお、一番人気の球団である、巨人が日本一になった年の平均は+11.3ポイントと2ケタの改善。人気があった長嶋茂雄監督で日本一になった94年と2000年は平均+23.0ポイントと大きく改善しています。一方、セ・リーグで優勝したものの、日本一になれなかった年の平均は+2.0ポイントと僅かな改善になります。24年はこのケースに当たります。巨人はセ・リーグで優勝したものの、クライマックスシリーズに敗れ、日本シリーズにはDeNAが進出し日本一になりました。
23年12月調査の大企業・全産業・業況判断DIは+21でしたが、24年12月調査では+23と、2ポイント改善しました。これは、巨人がセ・リーグで優勝したものの、日本一になれなかった年の平均+2.0ポイントと同じになりました。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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