インフレと金の関係
インフレ(インフレーション)とは、商品・サービスの価格である物価が継続的に上昇することです。
インフレが進行すると、原則的には金の価格に上昇圧力がかかることが多いといえます。これは、インフレによって通貨の実質価値が低下し、投資家が資産の価値を保つ手段として金を求めるためです。
金はその希少性と物理的な特性から、歴史的に「価値の保存手段」として認識されてきました。したがって、インフレが進行する局面では、より多くの投資家が金を購入し、その需要が高まることで、金の価格が上昇する傾向があります。
とくに、インフレが加速し、中央銀行が十分に対応できない状況では、金の需要が大きく高まり、価格が上昇する傾向にあります。たとえば、1970年代のアメリカでは、オイルショックとそれに伴う高インフレに直面しています。この時期、インフレ率が高進するなかで、金の価格も大幅に上昇しました。
1971年にアメリカが金本位制を放棄して以降、金価格は急騰し、1980年には一時的にオンス当たり700ドルを超える記録を達成しました。この時期は、インフレ時に投資家が金を安全資産として選ぶ典型的な例となっています。
しかしながら、インフレが進行する状況では、金利の引き上げがしばしば行われます。とくにアメリカでは、インフレを抑制するために連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを実施することが一般的です。
利上げは、経済全体の借り入れコストを増加させることでインフレを抑え込む効果があります。同時に、ドルの価値を高める効果もあり、高金利やドル高が金の価格を押し下げる圧力を生みます。
つまり、インフレが金の価格に与える影響は、必ずしも一方向には決まらず、複雑な相互作用があります。インフレが金の価格を押し上げる要因となる一方で、利上げやドル高が金の価格を押し下げる要因となるため、金の価格はインフレとの間に完全な相関を持つとはいえません。
実際には、インフレ、利上げ、ドルの動向が相互に影響し合い、金の価格に対して複雑な影響を及ぼすため、金価格の動きはつねに一筋縄ではいかないものです。
ちなみに、先ほどの1970年代のアメリカの例では、インフレが高進するなかでFRBが利上げを行いました。しかし、インフレが非常に高水準だったため、金の価格は上昇したのです。
このように、インフレが極端に高い場合や、利上げがインフレを十分に抑制できない場合には、利上げやドル高にもかかわらず、金の価格が上昇することもあるというわけです。
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