「まさか、あの会社が?」多くの企業が人手不足に悩む日本
国内の生産年齢人口の減少に伴い、企業の採用はますます厳しくなっています。帝国データバンクが大企業1,704社、中小企業9,404社を対象に、2023年4月に行った動向調査によると、「従業員が不足している」と感じる企業は全体の51.4%を占めていることが分かりました。このような人手不足に対して企業ではさまざまな対策を講じています。
国内小売業の大手・イオングループ系列のイオンモール株式会社が、新卒3年以内(第2新卒)の内定辞退者を優遇する「絆採用」をスタートさせました。
絆採用とは、内定辞退者との“つながりの強化”を重視し、3年以内であれば最終面接のみで選考・採用を行うというものです。平たくいえば、内定辞退されてしまった人材が別の会社に入社して、早期に転職を検討した際にいちばん先に候補に挙げてもらおうという戦略です。
流通業界では独り勝ち感があるイオンでさえ、そのブランド力に頼ることなく人材の獲得に向けた独自戦略などあらゆる施策を講じています。絆採用だけでなくイオンモールは、いったん退職した社員を再雇用する「アルムナイ・ネットワーク」も取り入れています。
「アルムナイ」とは「卒業生、同窓生」を表す言葉で、企業は社内事情に精通し、仕事の進め方や知識を持つアルムナイを採用することで採用や教育などのコストを抑え、即戦力を獲得できる可能性があります。
私は高校卒業以来、リクルートで長年にわたり大手から中小まで、さまざまな企業の採用をお手伝いしてきました。現在はその経験を活かし中小企業の採用戦略の策定やブランディング支援も手掛けています。イオンモールのこのニュースを目にし、 「大手企業の人手不足もここまできたか」 と改めて人手不足に対する危機感を覚えました。
このような動きが顕在化してくれば中小企業の採用環境はますます過酷なものになります。中小企業の採用は、第1志望の大手企業に入れなかった人や、大手企業からの転職組などの獲得によって成り立っていた側面があるためです。
しかし、大手企業が内定辞退者や退職した社員の採用にまで力を入れれば、中小企業の採用に応募する人材の母数が減ります。なぜなら、「どうせ転職するなら、中小より大手のほうがいい」と考える人が多いからです。そのような状況になると、中小企業が人手不足で事業が立ち行かなくなるリスクはさらに大きくなります。
長年、採用において絶対的な勝者だった大手企業ですら、プライドを捨てて、人材獲得戦略に舵を切りました。こうして採用市場では、大手企業も中小企業も限られた人材を獲得するための「採用戦国時代」へと突入することとなりました。
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