前回は、相続の分野において「総合的プロ」が存在しない理由を説明しました。今回は、8階建てのマンションが建つ土地に「広大地」が適用された事例を見ていきます。

広大地の可能性は無いと判断されていたが・・・

最近衝撃的事例を知ることになりました。所在地等の概要は下記の通りです(詳しいことは書けません)。

 

○○県○○市(平成2X年度相続)

土地面積2,300㎡(数字も変えてあります)

建物面積2,600㎡

RC造8階建て(築20年)賃貸マンション

道路北8m市道

用途地域第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)

 

【経緯】

A税理士事務所の当初申告では、8階建て賃貸マンションが建っていることにより広大地の可能性は無いと判断し、東京アプレイザルには相談しなかったとのこと。もしかすると弊社で事前相談を受けていても8階建てであれば「こりゃ無理だね」と言って事実上お断りの返事を出していたでしょう。

 

ところがです。平成2X年春ごろ、納税者本人宛に更正請求専門(を謳う)の某税理士事務所から広大地の可能性があるとのことで飛び込みの営業マンが尋ねて来たとのこと。このところ、更正請求を専門とする方々の営業攻勢が激しくなっているようです。納税者は完全成功報酬(還付額の○○%)のためX税理士事務所に更正請求の依頼をしました。当初申告を担当したA税理士はこのことを知らされませんでした。

 

【結果】

同年○○月に税務署より更正請求が認められたとの連絡があったそうです。

 

X税理士事務所の報酬金額は○○○○万円(羨ましいぐらいの多額です)。これを聞かされた当社も衝撃を受けました。このままでは遅れをとるとばかり当該事案の内容を検証することにしました。

マンション適地ではないことを証明して広大地を適用!?

【検証】

①実効容積率が114%程度であること

②周辺に戸建て分譲事例(開発現場)が豊富にあること。

③近隣に所在する同一用途地域の地価公示地の面積が120㎡であること。

④土地価格が収益価格(土地残余法という)で計算しても路線価評価以下にしか出ないことにより「明らかにマンション適地とはいえない」ことを証明して「広大地」の適用を主張したのではないかと思われます(あくまでも推定)。

 

【ポイント】

平成17年情報では、広大地に該当しない条件の例示として次の2つが挙げられています。

 

①既に開発を了しているマンション・ビルの敷地

②現に宅地として有効利用されている建築物の敷地(大規模店舗、ファミレス等)

 

つまり、当該8階建てマンションはこの2つにも該当しないという判断です。

 

【留意事項】

賃貸マンションが建っている土地はそれが「最有効使用」を満たしているかどうか(例えば実際に使われている容積率が何%等)の検討が必要であります。

本連載は、株式会社アプレイザルの代表取締役・芳賀則人氏のブログ『芳賀則人の言いたい放題!』から抜粋、再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒https://t-ap.jp/blog/cat_blog/column/

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