散財癖がついた原因は15年間にわたる職場でのいじめ。老後資金2,000万円が貯まった〈60歳おひとりさま女性〉が急に焦り始めたワケ「何とかしなきゃ」【CFPの助言】

散財癖がついた原因は15年間にわたる職場でのいじめ。老後資金2,000万円が貯まった〈60歳おひとりさま女性〉が急に焦り始めたワケ「何とかしなきゃ」【CFPの助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

2,000万円問題が話題になったのはもう過去のこと。でもそれを基準に考えている人も少なくありません。独身の美保さんもその1人でした。60歳の時点で2,000万円あれば老後はなんとか生活していけるだろうと思っていたのですが、それは大きな誤算だったのです。本記事では、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、老後に必要となる資産の目安について解説します。

受け取れるのは年金額満額ではない

美保さんは途中まで会社に勤めていたことから、その間の収入に応じた厚生老齢年金と老齢基礎年金が受け取れます。そしてねんきんネットで確認したところ、65歳で受け取れる年金額は年間150万円であることがわかりました。月に換算して12万5,000円です。上で紹介した例と同じですので、美保さんは2,000万円あるため、平均的な老後生活を送るには十分な資金を持っているといえます。

 

しかし、年金から税金や社会保険料を差し引かれると手取りの年金額は約1万円減り、11万5,000円程度になってしまうのです。そのため、生活費との差は毎年48万円になり、平均寿命まで生きるとしたら1,058万円が必要です。

 

それでも、2,000万円あれば大丈夫と言えるでしょう。

 

ただし、それは毎月15万円で生活できればの話です。美保さんの今の生活費は月25万円程度です。この生活を続ければ不足額は3,432万円まで膨れ上がってしまい、2,000万円では到底足りません。

 

焦った美保さんはリタイア後の生活レベルをどのようにするか考える事にしました。

 

リタイア後の生活レベルを考える

現在の美保さんの支出のなかで大きな割合を占めているのは、衣料・美容代と車の維持費、そして保険料です。

 

美保さんは今でも服が好きでお気に入りのセレクトショップで服を購入することが多く、その費用がかかっているほか、毎月ネイルサロンやエステにも通っています。化粧品も好きなブランドのものを長年愛用している状況。今後はそれらの費用を削減することで、生活費を下げることができるでしょう。もちろん保険の見直しも必要です。

 

また、車は現在親の介護で必要なため保有していることもあり、親が亡くなったあとには車を持たない生活でもいいかと思っています。

 

美保さん自身、今は余裕のある生活を送っているという自覚があるため、これからの生活レベルを徐々に落としていくつもりです。

物価上昇や保険料、医療費の増加も視野に入れる事が大切

年金の受取額は受け取り開始時で決まります。もし65歳から受け取るとしたら、その額が生涯受け取れます。

 

ただ、今後物価や医療費の上昇、さらには社会保険料の増加も考えなければならないほか、高齢者の医療費負担も増加する可能性も否定できません。

 

またマンション暮らしなら毎月管理費も払わなければなりませんし、介護状態になったときにどうするかも考えなければなりません。美保さんの場合はローンも完済しているため、売却して入居費用に充てることもできるでしょう。ただ、売却価格で足りるのかという心配も拭えません。

 

リタイア後に一気に生活レベルを下げられる人はなかなかいません。それどころか、今までできなかった旅行などを考える人もいます。であれば、それらの費用も準備しておく必要があります。

 

また、老後資金については運用しながら切り崩す考えも大切です。NISAの制度を利用しながら債券などをメインとした安定運用を行い、利益の一部を生活費として使ってもいいでしょう。

 

美保さんは65歳までは今の仕事を続け、リタイアするつもりです。それまでに貯蓄をさらに増やすことはもちろん、リタイア後の生活レベルをどう見直すかについて専門家への相談も視野に入れながら考え始めています。

 

 

新井智美

トータルマネーコンサルタント

CFP

 

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