最初はよかったのですが…60代元地方公務員総務の几帳面夫〈年金月32万円・貯金3,000万円〉で妻と過ごす緻密な老後を計画も、「はしゃいだのは退職後1年間だけ」【FPが解説】

最初はよかったのですが…60代元地方公務員総務の几帳面夫〈年金月32万円・貯金3,000万円〉で妻と過ごす緻密な老後を計画も、「はしゃいだのは退職後1年間だけ」【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

安定のイメージが強い公務員。定年退職したあとのセカンドライフもゆとりがあるのだろうな……多くの人はそう思いますが、意外にも生活が苦しいと訴える人が多いようです。本記事では、Aさんの事例とともに、先行き見通せぬ時代における生涯のジョブプランの必要性についてFPの川淵ゆかり氏が解説します。

老後2,000万円問題

老後2,000万円問題とは、2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書がきっかけとなって広がった老後の資金に関する問題をいいます。報告書では、2017年の高齢夫婦無職世帯の平均収入から平均支出を引くと毎月5万5,000円不足するという結果を報告しており、30年間で約2,000万円が不足することになります。

 

しかし、あくまでも平均値からの算出額ですから、それぞれの家庭での収入や支出によって金額は当然変わってきます。

コロナ禍以後「老後はいくら必要か?」

定年退職後のAさんは、自宅のリフォームのあと、趣味に旅行にと夢に見た悠々自適の生活をスタートさせます。

 

しかし、そんな夢のような生活は長くは続きませんでした。「最初はよかったのですが……」Aさんは切なげに振り返ります。緻密な計算が崩れだしたのは、新型コロナが国内で広がりだしたころ。外出もままならなくなり、大好きなゴルフや旅行などもできず、妻と2人で引きこもる生活が続きました。

 

そして、2022年ごろからは海外との金利差等の理由から円安が加速し、いろいろなものが値上がり。食料品に日常品に光熱費、まさにありとあらゆるものが値上がりとなってきたのです。

 

今年に入るととうとう主食であるお米の値段まで上がりだして、さすがにAさんも贅沢な生活はできなくなってきた、と感じ始めました。

 

「新型コロナのころは、また外国旅行をしたいけど収まるまでは我慢しようね、と妻と話し合っていたんです。ところが、新型コロナが収まると今度は予想もしなかった円安で海外旅行も楽しめなくなってきました。私の老後プランでは、円安や物価高なんてまったく考えてもいなかったんですよ。これからは働き手もどんどん減っていくから、まだまだ物価が上がっていきそうですね。税金なんかもまだ上がるんでしょうか。空き家も増えるというし、家もちゃんと売れるのかどうかも心配になってきました」Aさんは続けます。

 

「地震や災害も心配ですが、テレビのニュースも戦争の映像が多くなりましたよね。北朝鮮からのミサイルの数も増えましたし。景気が悪いせいか、詐欺のニュースも増えたような気がします。『闇バイト』という言葉も働いていたころはありませんでした。妻が怖がってしまってニュースを見ているとチャンネルを変えてしまうんですよ。定年退職したあとはなんだか世界が一変したような気持ちです」

 

ここ数年のあいだに世界情勢や国内の状態などが大きく変化しました。「老後はいくら必要か?」と考えても、なにが起きるかわからない時代に突入してしまいましたから、「これで安心」とは明言できなくなっています。

 

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