7割超のシニア、投資信託の「20%超の損失」に心が保てない…投資不安に対処できる投資手法の「具体的な名前」【証券アナリスト資格を持つFPが助言】

7割超のシニア、投資信託の「20%超の損失」に心が保てない…投資不安に対処できる投資手法の「具体的な名前」【証券アナリスト資格を持つFPが助言】
(画像はイメージです/PIXTA)

投資にはリスクがつきものですが、ある調査によれば、投資信託で20%超の損失でも保有を続ける人の割合は、60代で3割弱。それだけ投資への不安は大きいのです。しかし、そんな投資不安に対処できる投資手法があるのをご存じでしょうか。元銀行員で大学教授のキャリアを持ち、いまも教壇に立つFPが、シニアのための堅実な資産運用について解説します。

シニア世代の「不安への対処策」となる投資手法は…

ウォーレン・バフェット氏は、2008年、リーマン・ショックで世界中が株式投資について悲観的となるなか、大胆な株式投資を行ったことで有名です。価格の下落時に投資を行うことは「逆張り」投資と呼ばれ、そのときの市場価格が間違っていると考えたうえでの投資です。成功すれば大きな収益を獲得できますが、値下がりの心理的受け止めは値上がりに比べて2倍強く感じるため、かなりむずかしい方法でしょう。

 

実際、投資信託に投資した場合、損失が出ても保有し続けることができる金額について、20%超の損失でも保有を続ける人の割合は、60代は27.3%、全年齢平均では26.1%であったとする調査報告があります(投資信託協会「2022年度投資に関するWeb調査」2023年)。つまり、2割以上の損失に耐えられるシニア世代は3人に1人程度と思われます。

 

そうしたシニア世代が不安への対処策として取る投資手法として、「コンスタント・ポートフォリオ・インシュアランス」という、損失額を高い確率で一定の範囲に収める投資手法があります。たとえば、内外の債券と株式に分散投資を行うバランスファンドの運用と定期預金の運用という2つの資産での資産運用を考えます。

 

バランスファンドで内外の債券、株式の4資産に均等投資を行うタイプ、つまりシニア世代にとって身近な公的年金の資産運用と同様の資産配分の場合、標準偏差(リスク)は年率12%程度ですが、概算で10%とします。実際、近年の内外4資産に分散投資を行うバランスファンドの標準偏差(過去5年)の平均値は10%程度となっています(楽天証券「投資信託」)。

 

これは、1年間に確率約16%でマイナス10%以上の値下がりリスクがあるということであり、裏を返せば、確率約84%で年間の値下がりを10%未満に保つことができるということです(年間の予想益率はゼロとしておきます)。

 

さらに標準偏差の倍の2標準偏差は、確率約3%で年間20%程度以上の下落が起こるといえ、同様に裏を返せば、確率約97%という高い確率で損失を年間20%未満とすることが可能です。

 

これを損失の最大限度と想定していれば、おおむね大丈夫でしょう。むろん、実際にはこれでは不安ですが、年間の損失予想ですので、大幅な下落が始まったら一部運用停止とする等の対処策を取る時間があるからです。

注意…短期間に大幅下落が起こりうる株式投資には適さない

逆にいえば、株式への投資のように短期間に大幅な下落が起こる資産では、この手法は用いることがむずかしく、ミドルリスク・ミドルリターンの価格変動の緩やかな資産について用いることができる手法であることに注意が必要です。

 

たとえば、1,000万円の金融資産をバランスファンドと定期預金で運用するとして、損失の下限を100万円に留める運用を考えてみます。その場合、500万円までバランスファンドに投資をしても、確率約97%という高い確率で年間約20%未満の下落、つまり100万円という損失限度を守れると想定できます。

 

そして、資産運用を開始して1年間経過し、市場の状況が悪化してバランスファンドの価格が50万円減少して450万円となっていれば、最初に決めた損失限度100万円まで残り50万円となります。

 

この場合、残りの50万円が年間の下落幅20%に相当する金額、すなわち250万円でバランスファンドを運用することとします。250万円なら確率約97%で50万円程度の損失に留めることが想定でき、結果として、最初に定めた100万円の損失限度額を高い確率で守れるからです。そして、定期預金は200万円増額して700万円とします。

 

こうしてバランスファンドの投資額を変更してゆけば、一定の損失限度が高い確率、つまり年間確率約97%で守れるのです。

 

シニア世代の方々は、こうした手法・考え方があることも知って資産運用に取り組まれてはいかがでしょうか。

 

 

藤波 大三郎
中央大学商学部 兼任講師

 

 

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