(※写真はイメージです/PIXTA)

なにかと心配な高齢親の一人暮らし。しかし、老人ホームへ入居すれば安心、というわけではないようです。ここでは、一般的に資産が5,000万円から1億円未満の人のことを指す「準富裕層」にあたる母を老人ホームに入れたことで、苦境に立たされることとなった高橋美香さん(仮名)の事例から、セカンドライフの資産管理について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナーである波多勇気氏が解説します。

予想外の支出と資産の減少

幸子さんが老人ホームでの生活を始めてから5年が経過し、預金は急速に減少していきました。入居時の高額な費用だけでなく、医療費や特別な介護サービス、施設内での追加オプションなどが想定以上にかかり、残りの預金はわずか数百万円程度になってしまいました。

 

「お母さん、少し節約したほうがいいかもしれない」母の年金額は月に15万円程度。老人ホームで収入を超える支出を続ける母に美香さんは、節約を勧めましたが、すでに老後資産は尽きかけています。そんな状況のなか、幸子さんは突然の病で亡くなります。

 

美香さんは母親の相続を考え、残された資産を調べました。しかし預金はほぼ使い果たされ、残っているのは母親が住んでいた郊外の家とその土地だけでした。土地の評価額は高く相続税の対象となることが判明しましたが、問題は、現金がまったく残っていないということでした。

 

郊外の土地はそれなりに価値がありましたが、売却するまでのプロセスには時間がかかります。そのあいだに、相続を放棄する選択肢が取れる3ヵ月の期限が迫り、美香さんは現金を工面できず、相続税を払うことができなくなりました。

やむなく相続を放棄することに

美香さんは、土地を相続することを一度は考えました。母親の思い出が詰まった家を失うことなく引き継ぎたいという気持ちもありましたが、相続税の支払いの問題が立ちはだかりました。相続税は評価額に基づいて課されるため、土地の価値が高いほど、相続税の負担も大きくなります。

 

預金や現金があれば支払うことは可能でしたが、母親の生活費と医療費により現金はほとんど残っておらず、準備ができていない美香さんは苦境に立たされました。

 

不動産を売却して相続税を支払う方法も考えましたが、売却に時間がかかること、そして買い手がすぐに見つかる保証がないため、期日までに必要な資金を用意できる見込みが立ちませんでした。

 

相続税の支払いを延長することも可能ではありましたが、それでも現金の不足が問題となり、最終的に美香さんはやむを得ず相続を放棄することを決断しました。

 

母親の思い出の家や土地は、ほかの相続人や国に渡ることになり、美香さんはその財産を引き継ぐことができなくなりました。母親の生活のために使われた資産は、最終的には美香さんが期待していた相続の形では残らず、彼女は精神的にも経済的にも打撃を受けました。母の墓前で「ごめんね、ごめんね……」と繰り返し懺悔しています。

 

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