(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。「アジアリサーチセンター」のレポートを基に、2024年9月のアジア・マーケットを振り返ります。

 

2024年10月のアジア・マーケット・マンスリー(前半)はコチラ>>

インド<金融市場動向>

⇒株式は底堅い動きへ、金利は低下余地を模索へ、ルピーは下落リスク

 

【株式市場】

◆堅調な推移

インフレ率や農村経済に影響を与えるモンスーンの降雨量が順調であると報じられたことや、主要な世界株式指数に占めるインドの割合が上昇していると報道されたことなどが好感された。引き続き安定的な経済成長が期待できることや、堅調な企業業績が見込めることなどから相対的に底堅い値動きになると想定。

 

SENSEX指数

 

【債券(国債)市場】

◆債券利回りは当面もみ合い、低下余地を探る動き

政策金利の据え置きが続くなか、インフレ指標安定化の期待もあって、長期金利は数ヵ月スパンでもみ合いからやや低下基調の動きとなっている。今後も財政政策にサポートされ堅調な景気状況が継続しやすいうえ、準備銀行のインフレ抑制的な姿勢は緩和されたと見られる。来年半ばには利下げ実施の可能性も高まることで、債券利回りは当面もみ合いながら、緩やかに低下余地を探る展開を想定する。

 

10年国債利回り

 

【為替市場】

◆ルピーは下落リスク

9月下旬以降、米ドルの反発を受けて、ルピーの対米ドルレートは下落した。米国の年内利下げ観測を受けて緩やかな米ドル安が見込まれるため、ルピーの対米ドルレートには上昇余地がある。しかし、貿易収支赤字などを手掛かりにインドルピーが名目で下落する可能性があろう。2024年後半には、インドのインフレ率は8月の+3.6%から加速する見込みの一方、欧米のインフレ率は7月よりもやや鈍化する見込みであるため、内外物価格差では実質ルピーは上昇しやすく、名目ではルピーに下落圧力がかかりやすい。また、原油高リスクにも留意したい。

 

為替レート

インド<マクロ経済動向・政策>

⇒ゴルディロックスで政策金利据え置き

 

◆総合PMIは依然拡張を示唆

9月の総合PMIは58.3と8月から低下したものの、依然として中立の50を大きく上回って推移している。製造業PMIは56.5と8月の57.5から低下し、サービス業PMIは57.7と8月の60.9から低下したものの、景気は引き続き堅調であることを示唆している。

 

PMI

 

◆消費者物価上昇率はベース効果で加速へ

雨季(6~9月)の降水量が不足すると、夏季に農産物インフレが上振れしやすくなる。6月後半に一時的に降雨量は長期平均を下回ったが、7月から9月にかけてほぼ長期平均に沿った降雨量となった。8月の消費者物価上昇率は前年同月比+3.6%と低位で推移したものの、9月以降は食料品インフレはベース効果によって加速しやすく、消費者物価上昇率は9月以降、インフレターゲットレンジ内ながらも加速する方向に向かいやすい。

 

消費者物価上昇率

 

◆金融政策スタンスは中立へ変更

インド準備銀行は10月9日、金融政策決定会合で政策金利を市場予想通り6.50%で据え置いた。この決定は6委員中5人の投票に基づいており、新任3人のうちナゲシュ・クマール委員は0.25%ポイント引き下げに投票した。準備銀行は同時に政策スタンスを「緩和の撤回」から「中立」に全会一致で修正しており、将来的な利下げへの選択肢が見えてきた。ダス総裁は堅調な経済活動を背景に準備銀行はインフレ管理に傾注できるとした上で、成長率・インフレ率見通しの上下リスクはバランスしていると述べた。一方、ダス総裁は中東など地政学リスクはインフレ上振れリスクとなりうると注意喚起しており、早期利下げ観測をけん制したと思われる。

 

政策金利

ベトナム ←ピックアップマーケット

⇒株価は上昇へ、ドンは上昇へ

 

【株式市場】

◆月初に下落するも、その後反発

月前半は台風による被害がGDP成長率を押し下げる可能性があるとの見方などから下落。しかしその後、ベトナム財務省が外国人投資家に対するベトナム株購入前の資金準備義務を撤廃すると発表したことや、ベトナム政府が半導体産業開発戦略を発表したことなどを受け反発。海外からベトナムへの直接投資関連では、中国の自動車大手企業がベトナムの自動車販売大手と合弁会社を設立し、ベトナム北部に工場を建設することを発表した。投資戦略としては、海外企業によるベトナム進出の恩恵が期待される銘柄、若い人口構成と所得増加の後押しがある消費関連銘柄、ツーリズム関連銘柄などを長期目線で有望視できそうだ。

 

VN指数

 

【為替動向】

◆ドンは上昇へ

米国の大幅な利下げ観測の後退を受けて9月下旬から米ドルが反発したため、ベトナムドンの対米ドルレートは下落した。米国の年内追加利下げ観測は依然残っているため、緩やかな米ドル安を受けてドンの対米ドルレートには上昇余地があろう。一方、米利下げ観測の変化や原油高に伴うドン安リスクには留意したい。

 

ベトナムドン

 

【マクロ経済動向】

◆景気回復が続く

7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+7.4%と、市場予想を上回り、4-6月期の同+6.9%から加速した。不動産業は4-6月期の同+2.4%から7-9月期には同+3.9%へ加速した。9月上旬に大型台風が通過したこともあり、9月の製造業PMIは47.3へ急低下したが、9月の鉱工業生産は前年同月比+10.8%と2桁増へ加速した。統計局によると、台風被害は農林水産業に比較的大きくなったが、製造業、サービス業の成長率は堅調に推移した。

 

実質GDP成長率

 

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

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