私も隠し子だと相続人として名乗り出る人たち…プリンス、マイケル・ジャクソン、エルビス・プレスリー、桁違いの故人所得にびっくり

私も隠し子だと相続人として名乗り出る人たち…プリンス、マイケル・ジャクソン、エルビス・プレスリー、桁違いの故人所得にびっくり
(※写真はイメージです/PIXTA)

亡くなった有名人の故人所得は桁違いの金額です。故人所得とは、亡くなった後に発生する所得のことです。2016年に亡くなったアメリカのロック歌手プリンスの遺産相続について、多くの人々が隠し子など相続人として名乗りを上げる事態となりましたが、最終的に裁判所が兄弟6人を相続人として認定しました。本連載では、富裕層の国際相続の諸課題について解説します。

プリンスの6人の兄弟で遺産分割

プリンスの遺産は年少の兄弟3人の取り分の大部分を買い取ったニューヨークの音楽出版社プライマリー・ウェーヴと年長の兄弟3人、もしくはその家族によって等しく分配されることになりました。報道によるとプリンスの死後、多くの人々が相続人として名乗りを上げる事態となりましたが、最終的に裁判所が兄弟6人を相続人として認定しました。

 

この兄弟6人のうち、プリンスにまつわる知的財産権を売却するとするグループ3人と、売却しないとするグループ3人に分かれました。売却しないとする3人は、プリンス・レガシーLLC(以下「レガシーLLC」という)という企業体に集約されています。

 

売却するとした3人は、プライマリー・ウェーヴに権利を譲渡しました。プライマリー・ウェーヴは全体の25%の知的財産権を所有し、25%を売却した3人が権利を有することになりました。こちらは、プリンス・オート・ホールディングスLLC(以下「ホールディングスLLC」という)に集約されています。

 

遺産は、現金560万ドル(約7億5,000万円)と著作権等から構成され、現金については、レガシーLLCとホールディングスLLCに均等に分割されることになりました。

 

もう1つの争点は著作権の評価です。著作権を管理するComerica Bank & Trustは評価額を8,230万ドルとしましたが、米国内国歳入庁(IRS)は1億6,320万ドルとして対立しました。最終的に1億5,640万ドルという金額で妥結しました。この結果、修正申告ということになったと思われますがIRSは加算税640万ドルを取り下げています。

長期間におよぶ多額の所得課税

米国における相続の手続きとしては、被相続人が死亡した段階で遺産財団(estate)にその財産が移転し、遺言執行人または管財人がその遺産財団を管理するとともに、遺産の処理に関して原則として裁判所の検認を受けることになります。

 

要するに、未分割財産の状態で遺産財団が管理されることになるわけです。この検認を行う趣旨は、遺産を集めて債務等を支払い、相続人を確定して分配を行うという一種の遺産の清算手続きです。

 

遺産の清算過程において所得(たとえば利子所得、配当所得、不動産所得等)の生じる場合、遺産財団の管理に要した費用等はこれらの所得から控除されます。そして遺産を売却すれば、譲渡した資産の保有に関連して生じた費用は控除されます。その計算過程は基本的に個人の所得税における計算と類似したものです。

 

国際相続に詳しい酒井ひとみ弁護士(シティユーワ法律事務所)によると、エルビス・プレスリー、マリリン・モンロー、最近ではマイケル・ジャクソンの遺言書がメディアを通じてインターネット等で公開されていて入手でき、財産の中身が筒抜けになるとのことです。マリリン・モンローのプロベイトは2001年にようやく完了したとのことです。これまで名前の出た有名人の故人所得のなかには、この遺産財団の所得税課税が長い間行われていた可能性があります。

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

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