(※写真はイメージです/PIXTA)

安定のイメージが強い公務員。なかでも国家公務員は、年金額や退職金額も高いケースも多く、ひと昔前までは「絶対安泰」とまでいわれていました。しかし現在では、定年後に生活苦となる人も少なくないようで……。本記事では、Aさんの事例とともに、公務員の老後破産について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

想定外が夫婦の老後を脅かす

国家公務員の平均給与は令和6年人事院が実施した調査によると、国家公務員の平均給与月額は40万5,378円(平均年齢42.1歳、平均経験年数20年、行政職俸給表(一)による)です。一方で、民間企業では月額42万1,855円(平均年齢45.1歳、係長、事務関係職種)です。給与収入的には民間企業と大差ないようにみえますが、公務員のメリットとして、安定した収入と社会的信用が大きいようです。

 

現役時代もさることながら老後の生活設計を考えた場合、Aさん夫婦2人の年金は月40万円、退職金は4,000万円あります(貯蓄は1,000万円ほど)。厚生労働省の令和6年度の年金額改定のプレスリリースでは夫婦の年金は月23万483円からすると、共働きのAさん夫婦の老後は安泰だったはずです。

 

さらに、公益財団法人生命保険文化センターの調査では、必要な日常生活費は月23万2,000円、ゆとりある生活は月額平均37万9,000円から考えると、年金のみでゆとりある生活できるレベルにある、いわゆる勝ち組夫婦です。そして、Aさん夫婦もそう信じていました。

 

勝ち組夫婦が老後破産に陥る事例では、現役時代と同様に生活レベルが変えられないことが原因となることはあるあるです。Aさん夫婦も例外ではありません。ブランド品の購入が当たり前になり、生活水準を変えられないために老後破産に陥るケースでした。

 

さらにAさん夫婦に襲った想定外は、必要以上に老後にも娘にお金がかかったこと。娘の環境をよりよくしようと、ずっと私立学校に通わせ問題なく卒業できましたが、家では1人でいることが多く、自己表現やコミュニケーションが苦手になっていました。大企業に就職するも、馴染めず退職。引きこもってしまいます。親が心配すればするほど、娘は反発することも。「いままで、1人にしておいていまさら口出ししないで欲しい」と言い放たれました。

 

いままでは、公務員は老後も安泰と思われていました。ですが、Aさん夫婦の現役時代の贅沢品の購入を考えると、年金だけでは心許ないことがわかります。さらに、定職につけず、引きこもってしまった1人娘の面倒を見続けることにより、ゆとりのある老後計画は、潤沢な退職金を持ってしても静かに散ってゆきました。

 

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