人事部門のあずかり知らぬところで「現場」が暴走するケースも
最近は、経営陣や人事部門が知らないうちに現場が暴走するケースも増えているようですので、ある程度の警戒感を持つようにしたいものです。
具体的にいうと、ライバル企業の営業妨害行為に認定されるようなきわどい幹部人材を引き抜いたり、チームごとまとめて引き抜きを行うなどです。こうしたことは人事部門が関与することなく現場が強権的に話をまとめる寸前まで進めてしまうことで起きますが、やはり企業間で問題になる可能性があります。
ほかには、人材の経歴と実績が自己申告の評価に偏り過ぎているなど、よく見なければいけないところがおざなりになっていて、採用決定後に人事部門が初めて見ると、経歴詐称の問題など実はいろいろな懸念点が隠れていたというようなこともあり得るのです。
その一方で、オファーを受ける側も逆の立場として注意が必要です。人事部門がほとんど介入していない採用では現場が暴走している可能性があるので、全社がきちんとした段取りで準備できていない可能性もあるでしょう。現場は声かけや引き抜きに一生懸命ですから、聞こえのよい条件が飛び交いがちです。しかし、あとでフタを開けてみると詳細の詰められていない問題が出てきて「こんなはずではなかった」というギャップに苦しむようなこともあります。
採用決定までに「人事部門」の責任者が現れない場合は要注意
私の考えでは、現場主導で人事部門を通していないような採用であったとしても、採用決定の山場を迎える前には必ず人事部門の責任者が面接等に入って手続き、段取り、説明等の機会を設けて最終的なステップに進むのが一般的です。
いかに業界で名を馳せている経営幹部からのダイレクト・リクルーティングのようなものだったとしても、会社の適切な管理部門が山場にまで姿を見せない場合には何らかのリスクがあると思えるので、乗せられる一方ではなく注意を払って慎重に判断していただきたいと思います。
福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長