父の背中を追ってみたものの…面接で放たれた酷い言葉
原本さん、とりあえず不動産業の求人に応募しました。今は亡き父が不動産営業マンとしてバリバリ働いていた姿を思い出し、「あの背中を追えたら」と考えたのです。実直に勤め上げた経験が評価されることを祈って、複数の会社に履歴書と職務経歴書を送りました。
結果、惨敗。面接にこぎつけても「経験ないんでしょ? 年齢的にもちょっとねぇ……。結構体力勝負な仕事ですけど、本当に大丈夫なんですか」と一蹴されてしまったのです。
不動産業界はダメだ、やっぱり趣味を仕事にするのもありなのかもしれない、と次はライフ系の雑誌編集部に応募。面接では今まで蓄えてきた「海と山の知識」を存分にアピールしましたが、これまた経験不足を理由に落とされてしまいました。
……結局原本さん、現役時代だったときのツテを利用し、食品メーカーの下請け会社に就職しました。現在の年収は400万円、ボーナスはなく、月の手取りは25万円ほどになります。あと5年もすれば定年です。
「今の給料ですら有難いと思わなきゃいけないのは百も承知ですが、やっぱり少ないと感じてしまいます。年収半分以下ですからね。本当に、一瞬の気の迷いだったと反省しています。5年後、どうすればいいんだろう。嘱託社員になるのかな。もっと給料下がりますよね。……不安しかないです」
「老後不安、もちろんありますよ。65歳からの年金を頼りにしています。貯蓄を切り崩すのは怖いじゃないですか。娘に子どもができたら教育資金だって渡したいので、お金の余裕は本当にないです」
最後に原本さん、どうしようもない本音を打ち明けました。
「あのまま会社を辞めていなかったら、ですか。2日に1回は思いますね。妻からの視線も冷たいですし」
「だからといって、今さら戻れるわけでもないので、どうしようもないんですけど。今の仕事の内容自体は、可もなく不可もなく、といったところです。そこまで横柄な人もいないですし、恵まれているほうなのかな」
「定年が迫っている身として老いは感じていますけど、それでもまだ人生20年以上ありますよね。恐ろしいな。このまま淡々と過ぎていくのはあまりにも悲しい気がしますので、やっぱり、人生を楽しむ『何か』を見つけたいとは考えています」