「美味しそうな投資信託」に潜む危険性
みんな、誰もが美味しいものを食べたいですよね。私だってそうです。でも、美味しいものばかり食べると、からだによくないことも知っています。それは、栄養が偏る、美味しい料理は味が濃いとか塩分が高い、また、旨味を感じる脂肪分はカロリーが高いからです。だから、健康に気遣う人は、食べたいものを食べるのではなく、セーブするとか薄味でも工夫して満足度を高める努力をするなど、我慢してヘルシーな料理で済ませようとするのです。
資産形成も同じです。投資において儲かりそうな投資信託を探すことは、美味しい料理を探し求めているようなものです。これは、自分のからだにとって無理していないか、健康へのリスクが高くはないかという視点よりも、価格が上がりそうなのか、分配金も含めてリターンが高いのかを意識しているのです。
料理を選ぶことにたとえれば、和食でも洋食でもエスニックでもいいので、とにかく美味しいものを食べたいというものです。でも、こういった食べ方ではカロリーや塩分のとりすぎに繋がってしまいますよね。いずれは健康を害してしまう危険性が高まります。投資でいうところの、自分にみあった以上のリスクをとっていることになります。
これに対して、健全な資産形成とは、儲かりそうなもの(美味しいもの)を探すのではなく、自分にあった資産形成(自分の健康のための食事)をベースに投資を考えることです。その基本は、年齢などからみて自分が受け入れることができるリスクの大きさにあわせて、投資する対象を選ぶことです。
「自分にあったものを選ぶ」ことで投資の健全性を保つ
たとえば、若い人はこれからも自分で収入を稼ぐことができる時間が残されているので、大きなリスクをとることができます。標準的なサラリーマンであれば、2億円以上の生涯収入があるといわれています。若いうちに投資で多少のロスがあったとしても、残りの人生で取り返す余地が残されているので、自分の人生設計が台無しになることはないでしょう。そもそも若いうちは投資にまわすことができるお金自体が小さいので、仮に思ったようにいかなくても影響も小さいはずです。そのため、自分にとって多くのお金を投資にまわすことができ、また、株式など比較的リスクの高い資産に投資をすることができます。
さらにいえば、長期投資の効果も期待できます。株式などの価格変動が大きい資産は、短期間の投資では期待したような結果を得られるとは限りません。むしろ、価格が大きく下落することすらあります。中国経済の変調や英国のEU離脱などがその例です。でも、長期間にわたり投資することにより、短期的な価格変動の影響を抑え、投資した対象に期待される収益が得られる可能性が高まります。失われた20年を経験した日本株式でさえ、20年以上の期間でみればそれなりの収益をあげることができています。
一方で、退職や年金生活が視野にはいるシニア世代では、そういう大胆な投資は向いていません。それは、高齢になってから大きな損失を受けると、その後の人生設計が狂ってしまうからです。自分が働いて蓄えなおす余裕もなければ時間も残されていません。無理をせずに、債券など低リスク資産を中心とした保守的な運用が向いているといわれています。
これは、自分の年齢や体調にあった食事を心がけるようなものです。からだに良いかどうかという視点で食事をみた場合、色々な切り口がありますが、一般的にいわれているのが、カロリーや塩分量が目安になります。
若いうちは、高カロリーな食事をとっても問題ありません。ラーメン、チャーハン、餃子セットなどガッツリとした食事をむしろ好みます。でも一方で、年齢が進んでシニア層になれば、カロリーが低く栄養バランスのよい和食が望ましい食事とされます。人によっては、高齢になるとあまり肉を食べたくなくなります。からだが肉よりも魚を欲するのでしょう。これは健全な姿です。
健康に生きていくために、食生活においては食べる物に気を遣います。同じく、健全な資産形成のためにも、どのようなものに投資をするのかに気を遣うべきです。この基本は「自分にあったものを選ぶ」ということです。美味しい料理と、からだによい料理は違います。儲かりそうな投資信託を探すことと、自分の資産形成にあった投資信託を選ぶことは違うのです。