「月次試算表」を税理士に依頼する中小企業は、社長の経営判断が遅すぎる【税理士が解説】

「月次試算表」を税理士に依頼する中小企業は、社長の経営判断が遅すぎる【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

月次決算とは、1ヵ月ごとに実施される決算のことです。月次決算を税理士へ依頼すれば、迅速な経営判断ができたり、専門家の立場から意見をもらえたりできます。そのため、毎月依頼している中小企業の社長も多いでしょう。しかし、メリットばかりではなくて……。税理士である稲垣保氏の書籍『可視化会計 本当の利益を掴む術』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集し、みていきましょう。

社長業を判定する2つの要素

社長業の仕事は、いろいろと幅が広く、大変な重責を背負っているものだと考えています。そして、その仕事の成績は、次の2つで判定されます。

 

1つ目は、人・物・金を効率よく使って、利益のお金の源泉となる「売上高というお金」を稼ぎ、その稼いだお金から経費やその他の支出を控除して利益のお金を残すこと。

 

そして2つ目は、稼いだ利益のお金を再投資しながら、より多くの利益のお金を稼ぎ、より多くの利益のお金を残して会社の財務を強化することです。

 

もちろん、お金を残すことだけがすべてではありません。しかし、商売を継続していくためには、利益のお金を稼がなければなりません。これは明白な事実です。そして、その利益のお金を毎年少しずつでも蓄積していくことが、会社の財務を強化する唯一の道なのです。

 

以上のことから、会社の業績判定は、社長さんのいろいろな仕事の結果として、「利益のお金をいくら稼いだのか?」そして「その利益のお金をいくら残すことができたのか?」で判定すべきだと思います。

 

この考えが、本来のプロフィット・キャッシュフローの原点であるべきだと思います。ですから、本当の利益とは、現行会計が求める差額の損益ではなく、利益のお金であることを認識し、本当の利益を明らかにする「倒産防止管理表」と「お金の損益計算書」を作成して、経営成績の判定をしながら、経営の改善に役立てて欲しいと思います。

月次試算表は自社で作成するべきワケ

このように、重要な経営の業績を判断するための基礎データは、毎日の商取引を正確に早く処理して、月末から遅くても1週間以内には月次試算表が出るように自計化する必要があるでしょう。

 

月次試算表の作成を会計事務所などに依頼している企業も多いとは思いますが、はっきり言ってそれでは遅すぎます。月次試算表が2ヵ月遅れや3ヵ月遅れになってしまっては、まったく意味をなさないものを手にすることになってしまいます。

 

これでは、資金管理という羅針盤を見ずに航海しているようなものです。

 

月次試算表は自社で作成する。効率的で意味のあるものにするにはそれしかありません。

 

多少割高な料金を払ってもこの時点利益資金管理会計を熟知している会計事務所に自計化の指導と社長さんの財務能力強化の指導を求めるべきだと思います。

 

 

稲垣 保

有限会社マーフシステム代表取締役

財務経営コンサルタント、税理士

 

1974年東京経済大学卒業。新卒入社した会社を2年で退職し税理士試験に専念。合格後1977年より会計事務所で働き始める。1985年に相続対策コンサルティング会社に転職し、1989年12月に独立して有限会社マーフシステムの設立と稲垣税務会計事務所を開設する。1996年9月に佐藤幸利先生が主催するCMA研究会に参加し、利益資金会計研究所を併設して資金管理指導を実践。現在まで「お金の研究」を継続している。著書に『経営者のための利益のお金が見える会計』(WIP)。

 

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※本連載は、税理士である稲垣保氏の書籍『可視化会計 本当の利益を掴む術』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

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