値下がりした株を手放さない投資戦略の欠陥
この戦略には2つの大きな欠陥がある。
1.勝手に抱いた幻想に基づいている。
2.売るべきか否かを判断する際に何よりも重要な要素である「あなたが上げ潮に乗っているのか下げ潮に乗っているのか」を考慮していない。
この戦略が基づいている幻想とは何か? ズバリ言わせてもらうと、現実を直視し状況に対処することから逃げ回る限り危険はないと思っている、頭を砂に突っ込んでいるダチョウだ。株式市場の言い回しでは「株が下落しても、売らない限りは本当に損したことにならない」という幻想だ。
わかりきったことかもしれないが、絶対に忘れないように言っておこう。「お前は、完全に、負けている」株を手放していないからといって、損していないということにはならない。実際、損したのだ。もう絶対に戻ってこない。アンコールもなしだ。
疑わしいと思うなら、投資信託会社について少し考えてみれば、納得できるはずだ。ウォール街が個人投資家に売り出す何千もの金融商品のなかで、投資信託は特に会計面で最も厳格に規制されていて、「マーク・トゥ・マーケット」と呼ばれる画一化された会計処理がすべての投資信託に法的に義務付けられている。
投資信託は「マーク・トゥ・マーケット」に基づき、取引日の締めごとに、それを構成するすべての株式のそれぞれについて、現在の株価を現在保有する株式数で掛け合わせ、その日の市場に基づく現在価値でそのポートフォリオ上の各株式が計上される。投資信託のポートフォリオすべてについてこの作業が完了すると、それらの現在価値をすべて足し合わせ、さらに手持ちの現金があればそれを加えて、当該投資信託の流動資産の総額が算定される。
投資信託の一口当たりの価値を知るには、総資産から総負債(マージン・ローン、手数料、管理費、人件費、営業費等)を差し引き、その数値を投資信託の総口数で割ると、投資信託の「基準価格(NAV)」が算定できる。これが、特定の取引日の終了時における投資信託の一口当たりの価値を表す。
何が言いたいのかというと、つまり、あの無能な米国証券取引委員会(SEC)でさえ、投資信託がNAVを計算する際に、株式を買うときに支払った価格を用いることを認めていないのだ。なぜか。明らかに的外れだからだ。その上、人の目を欺くからだ。
おわかりいただけただろうか。投資信託がポートフォリオを構成するすべての株を時価で計上しないと、まだ売却されていないだけの負け犬のみで構成された投資信託を投資家は見分けることができない。これは、あなた自身のポートフォリオでも同じだ。
値下がりした株をまだ売却していないからといって、まだ損をしていない、ということにはならない。もう損をしたのだ。そのカネはなくなった。ただし、そのカネが永遠に返ってこないか、といえば、それはまったく別の話で、保有する株を日々、時価で把握しないことのもうひとつの欠点と深く関わる。それは、売るべきか否かを決定する際に最も重要な要素――すなわち「なぜ」――を見落とすことだ。
ジョーダン・ベルフォート
投資コンサルタント
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