高めの物価見通しが、暮らし向き判断の足枷に
「消費者マインドアンケート調査」を使って、最近の物価上昇見通しが、人々の景況感(暮らし向き判断)におよぼす影響を確認してみましょう。
内閣府「消費者マインドアンケート調査」は16年9月から実施されている調査です。スマホやパソコンから回答する誰でも自ら参加できるユニークな調査です。毎月20日締め切りで、結果の公表時期が当該月の22日~24日頃と早く、消費者マインドの基調変化を的確に把握できます。
質問は「暮らし向き(半年後)」と「物価上昇(1年後)」の2問です。
たとえば「暮らし向き」の質問は、「良くなる」「やや良くなる」「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」の5つの選択肢から回答します。
景気ウォッチャー調査と同じ5段階での評価なので、同調査と同様に、1.0から0.0まで、0.25刻みでの点数を割り振り、加重平均して、暮らし向き判断DIは3月から7月は、物価見通し判断DIを簡単に算出することができます。全員が「変わらない」と答えると50になります。つまり、50が判断の分岐点ということです。
暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は16年9月から21年8月までの最初の5年間は0.01と無相関でした。
しかし、21年9月から24年8月までの最近の3年間はマイナス0.74と逆相関になっています。現状は、高めの物価見通しが暮らし向き判断の足枷になっている状況です。
24年の「暮らし向き判断DI」と「物価見通し判断DI」
暮らし向き判断DI
3月から7月は物価見通し判断DIが80台前半に低下したことから、平均的水準以上に。ただし、物価見通し判断DIが80台後半に上昇したことから、再び、平均的水準下回る30台前半に。
暮らし向き判断DIの16年9月から24年8月の全調査期間平均は36.8、最高は17年1月48.9、最低はコロナ禍の20年4月20.7です。
24年をみてみると、1月・2月は30台前半の水準でやや弱めでしたが、物価3月・4月では40台まで回復しました。その後3ヵ月は36台で平均的水準でしたが、8月は33.8に低下、やや弱めの水準となりました。
物価見通し判断DI
物価上昇判断DIは、16年9月から24年8月の全調査期間平均は76.5、最高は23年6月90.7、最低は21年2月の60.0です。調査開始から22年1月までは60台・70台で安定推移していましたが、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降80台・90台と物価が上昇するという見通しが強まりました。
今年に入って物価上昇判断DIは、高水準ながらもやや落ち着き、2月以降は7月まで80台前半でしたが、電気代・ガス代の補助がなくなったこと、主食のコメの値段が上昇したこと、一旦落ち着いたと思われた卵の価格が猛暑の影響で再び上昇傾向になったことなど、身近な物価が上昇したこともあって、8月には88.3と80台後半まで上昇しました。
※なお、本記事は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。