パリ大会中の日経平均株価変動率は▲4.3%。「メダル10個超え」ながらも“初のマイナス”へ
パリオリンピック2024は現地時間8月11日に閉会式が行われ、17日間の会期を終え閉幕しました。「ジェンダー平等」の理念を反映し、参加した選手の数は史上初めて男女ほぼ同数で、200を超える国・地域と難民選手団の選手約1万1,000人が参加し、32競技329種目が実施されました。
日本が獲得したメダル数は金20個、銀12個、同13個で合計45個になり、金はアテネ大会の16個を上回り、メダル総数はリオデジャネイロ大会の41個を上回り、ともに海外開催の大会で史上最多を更新しました。
これまでの海外開催の大会で日本が金メダルを10個以上獲得すると、大会期間中の日経平均株価が上昇するという傾向がありましたが、今回のパリ大会では▲4.3%と変動率が初めてマイナスとなってしまいました。
大会期間中に、日経平均株価の歴史的大波乱相場が生じました。8月5日に日経平均下落幅は歴代第1位(下落率は第2位)、翌6日は上昇幅歴代第1位(上昇率は第4位)を記録しました。日銀は7月31日の金融政策決定会合で0〜0.1%としていた政策金利(無担保コール翌日物レート)を0.25%に引き上げる追加利上げを決めました。事前に7月の利上げを見込む向きは少数派でした。変更発表日の日銀・植田和男総裁のタカ派的会見や米国雇用統計の下振れ、急激な円高などが懸念材料となりました。
日本の金メダル獲得数は20個だが、獲得数ゼロだった第7日直後の8月2日(金)を除くと株価変動率は「プラス」に
パリオリンピックでの日本の金メダルは20個ですが、獲得した日は、柔道などのメダルラッシュがあった第2日から第6日の前半と、レスリングなどのメダルラッシュがあった第10日から最終日までの後半に分かれます。第7日から第9日の3日間は金メダルを獲得した選手はいませんでした。開催日の第7日から第9日の直後の日経平均株価の取引日は、第7日に対応する8月2日(金)、第8日・第9日は3日(土)、4日(日)で休場でした。
日本が獲得した、金、銀、銅を合計した総メダル数をみると、金メダルがなかった第7日から第9日の3日間では銅メダルが1個だった7日目が最少でした。
金メダル獲得がなく、総メダル数も銅メダル1個と一番成果が少なかった7日目に対応する、8月2日の株価下落幅は▲2,216円63銭(歴代第3位)です。大会期間中の変動幅から8月2日の株価下落幅を除きパリ大会の変動率を計算すると+1.5%のプラスになります。金メダルの獲得効果は、詳細にみると今回のパリ大会でもみられたと言えるでしょう。
上位10ヵ国の「金メダル数」と「世界経済に占める名目GDPシェア」の相関係数は0.933に上昇
2016年のリオ・オリンピックで日本は金メダルを12個獲得し、ランキングは第6位。ランキング10位までの国の金メダル数と当時の世界経済に占める名目GDPのシェアの相関係数は0.868と高い数字になりました。選手育成などにお金をかけられる国が強いとも言えるし、金メダルを獲るとその国の人々が元気になって、景気が良くなるとも言え、相乗効果が生み出されたようです。
2021年に開催された2020東京大会では、日本は金メダルを27個獲得し、ランキングは第3位。ランキング10位までの国の金メダル数と当時の世界経済に占める名目GDPのシェアの相関係数は0.864になりました。
この傾向は、2024パリ大会でも続きました、日本は金メダルを20個獲得し、ランキングは第3位。ランキング10位までの国の金メダル数と最新の2023年の世界経済に占める名目GDPのシェアの相関係数は0.933と、数字が高まりました。
また、2020東京大会での金、銀、銅すべての総メダル獲得数をみると、日本は58個のメダルを獲得、ランキングは第5位。ランキング10位までの国の金メダル数と当時の世界経済に占める名目GDPのシェアの相関係数は0.871でした。
今回の2024パリ大会での金、銀、銅すべての総メダル獲得数をみると、日本は45個のメダルを獲得、ランキングは第6位。ランキング10位までの国の金メダル数と2023年の世界経済に占める名目GDPのシェアの相関係数は0.920に高まりました。
※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。