「信じて託したのに」認知症を患う親の介護をしていた身内が、まさかの横領…。大切な財産を守るために身につけたい「3つの知恵」【弁護士が解説】

「信じて託したのに」認知症を患う親の介護をしていた身内が、まさかの横領…。大切な財産を守るために身につけたい「3つの知恵」【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の親の介護をしてくれている親族が財産を横領していたとわかったら、大変なショックを受けるとともに憤りを覚えることでしょう。こういったケースでは、介護を任せているという背景から、切り出しにくいという事情も垣間見えます。では、親族が相続財産を横領しているとわかったときは、どうすればよいのでしょうか。ベリーベスト法律事務所の代表・萩原達也弁護士が解説します。

横領された相続財産を取り戻せる?

親族によって横領された財産を取り戻すことができるのでしょうか。相続発生前に横領が発覚した場合と、親が亡くなり相続が発生した後に横領が発覚した場合とに分けて説明します。

 

(1)親の生前に財産の横領が発覚した場合

親の生前に財産の横領が発覚した場合、親自身が横領をした親族に対して返還請求をしていくことになります。親がまだ生きている段階では、相続は発生していませんので、子どもが親の代わりに親族に対して請求することはできません。

 

もっとも、親が認知症になっている場合、本人が親族と交渉して財産の返還を求めていくのは困難といえます。このようなケースでは成年後見制度を利用して、成年後見人が本人に代わって返還請求を行う必要があります。

 

成年後見人制度については、後述します。

 

(2)親が亡くなった後に財産の横領が発覚した場合

親が亡くなった後に財産の横領が発覚した場合、横領をした親族に対して財産の返還を求める権利は、法定相続分に応じて相続人に相続されます。そのため、相続人が親族に対して損害賠償請求をするなどの方法で横領された相続財産を取り戻すことになります。

 

親族が横領をしたことを素直に認めているのであれば話し合いにより解決することもできますが、犯罪行為にもあたり得る横領を簡単には認めてはくれないでしょう。そのような場合には、裁判所に訴訟を提起して横領された財産を取り戻すことになります。

 

また、相続法の改正により、共同相続人による同意がある場合には、使い込まれた財産も含めて遺産とすることで、遺産分割調停の中で解決することも可能になりました(民法906条の2第1項)。

親が認知症になったときに鍵になるのは資産管理の方法

親が認知症になってしまった場合、相続も見据えて財産管理をどのように行っていくのかは非常に難しい問題です。親族が個人的に管理する以外に、どのような方法・対策があるのかを知っておくことが重要です。

 

(1)成年後見人

成年後見人とは、認知症などが原因で判断能力が低下した本人に代わって、財産管理や契約などの締結を行う役割を担う人をいいます。

 

親が認知症になってしまったときは、家庭裁判所に成年後見人の選任申し立てをすることで、裁判所により成年後見人が選任されます。成年後見人は、本人に代わり適切に財産管理をしてくれますので、親族による横領のリスクを軽減することができるでしょう。

 

ただし、成年後見人は裁判所が選任しますので誰が選任されるかわからず、専門職後見人(弁護士・司法書士など)が選任されると親の財産から報酬の支払いが必要になります。また、親族が選任された場合は、年1回の裁判所への報告が必要になるので、負担に感じるかもしれません。

 

(2)家族信託

家族信託とは、自分の財産を家族や信頼できる第三者に託し、信託契約で定めた目的に従い受託者が財産の管理・運用・処分をすることができる制度です。

 

親が認知症になってしまうと、財産の管理や処分に必要な意思能力が失われてしまうため、そのままでは適切な財産管理ができなくなってしまいます。しかし、親が認知症を発症する前に家族信託を利用していれば、将来親が認知症になったとしても、受託者により財産の管理や処分が可能になります。

 

家族信託は、認知症による資産凍結を防ぎ、財産管理も適切に引き継ぐことができる仕組みといえるでしょう。

 

ただし、契約という形式をとりますので、家族信託は親が認知症になってしまうと利用することはできません。認知症になる前に将来を見据えて契約するかを検討する必要があります。また、受託者に負担が生じるため、引き受け手が見つかりにくいといったデメリットもあります。

 

(3)遺言書

親族による横領を直接防ぐ方法ではありませんが、遺産相続に関する争いを回避したいという考えがあるなら、親が認知症になる前に遺言書の作成を進めておきましょう。

 

認知症という診断が出ても、その程度はさまざまですから、内容によっては遺言書を作成することは可能と言えます。しかしながら、後日、遺言書の有効性が争われる可能性がありますので、認知症という診断を受ける前の段階での遺言書の作成をおすすめします。

 

また、認知症の疑いが生じた後に遺言書を作成したいという場合には、公正証書遺言にしておくことをおすすめします。

 

相続財産を守るだけではなく、親が困ることなく最期まで過ごすためにも、家族で話し合い、資産を適切に管理することが大切です。財産管理の手法にはさまざまなものがありますので、弁護士と相談しながら適切な方法を選択していきましょう。

 

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

 

 

萩原 達也

ベリーベスト法律事務所

代表弁護士

 

 

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※本記事は、公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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