今回は、注目度の高い「がん免疫療法」が抱える金銭的な問題について見ていきます。※本連載は、生命保険の専門家であり、自身も医師として活躍する佐々木光信氏の著書、『比較検証、がん保険 』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、近年長足の進歩を遂げている「がん医療」の種類と変遷を紹介します。
臨床医、製薬メーカーが懸念する「薬価の高騰」
前回の続きです。しかし、臨床医も製薬メーカーも薬価の高騰を懸念しています。ニボルマブや同類のイピリムマブも非常に高価な薬剤で、今後開発されるであろう新薬も高価になることが予想されています(下記図表1参照)。
[図表1]薬価
今後、免疫療法の全体の進歩の中で細胞免疫療法を含め、民間保険会社が治療費用を保障する商品の開発を検討する時期が来ると考えていますが、免疫療法の枠組みで保障するのか、抗がん剤治療の一部に含めて保障するのか整理しなければなりません(下記図表2参照)。
[図表2]抗がん剤と免疫療法の区分は?
抗がん剤保障に「細胞免疫療法」を含む保険は少ない
ちなみに丸山ワクチンは有償治験薬であり、患者は治験にもかかわらず費用負担しなくてはなりません(下記図表3参照)。
[図表3]薬剤承認と薬剤費の患者負担について
抗がん剤治療給付金を用意している会社の給付範囲は、多くの会社は薬事承認、または保険適用を受けた薬剤と定義していますので、丸山ワクチンは給付金の対象にはなりません(実際の個別会社の運用を調べたわけではありません)。
現在、抗がん剤保障に細胞免疫療法を含むことを明示しているのは、今回調査対象の商品では『ひまわり生命』のがん保険のみでした。下記図表4に約款の定義を示しておきます。
[図表4]がん外来治療給付金 別表7 の備考3
株式会社保険医学総合研究所
代表取締役社長
慶応義塾大学医学部卒後、膀胱癌研究で学位取得、三四会賞受賞。
医療機関勤務を経て、千代田生命保険相互会社医事調査課長、医務部長。2001年アメリカンファミリー生命保険会社で医務部部長、チーフメディカルディレクターを経て独立、現職。
保険医学を中心とした危険選択(保険引受、保険支払)実務、商品開発実務に30年以上従事、FPへの情報提供や保険医学・営業教育に関する講演活動を行う。
医学の進歩と生命保険の関係や医療介護保険制度と民間保険を中心に研究活動に取り組み、この分野の論文など研究成果多数。保険にテレビ電話を使用した危険選択手法を導入、経済誌「フィナンシャルタイムス」やNHK「クローズアップ現代」などで取り上げられる。
日本保険医学会評議員、生命保険協会医務部会委員など歴任、現在インシュアランス誌論説委員。
医師、医学博士、介護支援専門員資格、日本保険医学会認定医、日本医師会認定産業医資格で、所属学会は、日本癌治療学会、日本泌尿器科学会、日本保険学会、日本保険医学会、日本生命倫理学会等。
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