人のみならず、マンションまでも…高齢化が進展するニッポン
日本では、国民の高齢化のみならず、「マンションの高齢化」までも進展している。国土交通省『令和5年度マンション総合調査』によると、築40年以上のマンションストック数は2012年調査では29.3万戸だったが、2022年調査では125.7万戸と、この10年の間に、4倍以上にも増えている。この先、10年後には260.8万戸、さらに10年後には445.0万戸になると推測されている。
横浜市郊外の分譲マンションに暮らす70代の男性は、今後の生活拠点について頭を悩ませている。
「このマンションを購入したのは20代後半、結婚してすぐでした。ひとり娘もここで生まれ、巣立っていきました。恥ずかしながら還暦手前で熟年離婚しまして、元妻は実家の親族を頼り、貯金の大部分をもって関西に帰っていきました。いまは私ひとりで暮らしています」
築40年を超えるマンションは外壁が傷んでヒビが入り、天井の隅には大きなシミが広がっている。フローリングも日焼けし、古い冷蔵庫の下の塩ビのタイルの下にもシミが見える。
「空き部屋か、高齢者ばかりですよ。若い人なんて見かけません」
マンションだけでなく、入居者の高齢化も進む。マンション入居者で最も多いのは「60代」で27.8%、次いで「50代」23.7%、「70代」21.7%となっている。5年前調査と比較すると「30歳以下」が7.1%から6.2%と減少する一方、「70代」は22.2%から25.9%と増加している。
3ヵ月以上空室の戸数割合だが、築10年以内のマンションでは「0%=空室なし」が71.3%のところ、築40年以上のマンションでは32.1%。また、総戸数に対する所在不明・連絡先不通の住戸の割合が0%超~20%のマンションは3.3%。
空き家が多い、所有者に連絡がつかないという状況は、修繕の問題に直結する。実際、マンションなどの集合住宅における修繕費の不足は社会問題となっている。今回の調査では4割のマンションが「修繕積立金残だが計画に比べて余剰がある」と回答する一方、「計画に対して20%超の不足」と回答したマンションは11.7%、つまり10棟に1棟の割合だ。
老朽化対策についての議論の有無は「議論を行っていない」が66.1%で最多。「議論を行い、建て替えや解体、修繕・改修の方向性が出た」というマンションは13.3%にとどまっている。自身の住まいが「老朽化」という厳しい状況にあっても、それと向き合わない人たちが一定数存在するのである。