義両親の死後、夫の口から出た「驚きの言葉」
実は、鈴木さんの夫の父親は自宅不動産と現預金で合計2億円ほどの財産を持つ小金持ち。姑が亡くなったときは、数百万円のへそくり程度の遺産だったが、舅が「子どもたちで適当に分けろ」といったことから、夫と2人の妹で3等分に分けておしまいになった。
しかし今回の相続は金額が大きい。しかも、舅は公正証書遺言を残しているという。
舅の葬儀から数日後、鈴木さんの自宅に妹2人が集まり、遺産相続の話になった。
相続人ではない鈴木さんは、その場にいるのがはばかられたが、お茶を運びつつ、断片的に聞こえてくる話に耳を傾けた。どうやら、遺産はきょうだいで三等分というのが、遺言の中身のようだった。
「税金を払っても、5,000万円ぐらい残るかしら? もしそうなら老後は心配ないかも…」
その日以降、鈴木さんの夫は「相続の件で打ち合わせに行ってくる」といって家を空けることが続いた。
ところがその後、一向に相続財産についての話が出てこない。
鈴木さんはしびれを切らし、夫に聞いた。
「お父さんの遺産、どうなったの? 家は売れた?」
すると、夫の口から驚くような話が出た。
「子どもも残せなかったのに、相続するなんて申し訳ない」
「家は売らないよ。下の妹が欲しいっていうからさ…」
「ええっ、陽子さん(二女)が!?」
鈴木さんは思わず大きな声を出してしまった。
「それであなたと明子さん(長女)は納得したの?」
「うん。明子は貯金を全部相続できればそれでいいって」
「あなたはなにも相続しないの?」
「うん。僕は放棄した」
「どうして?」
「だって、妹たちは子どもがいるだろう? うちは子どもを残せなかったのに、相続なんかしたら、親父とお袋に申し訳ないじゃないか…」
遺言書があっても、相続人全員の合意があれば、遺産の分配は変更しても構わないのだという。
鈴木さんは複雑な表情を浮かべた。
「夫の実家の相続であって、私には何の関係もないのはわかっています。わかっているんですが、夫をかばって、これまでずっと私が矢面に立ってきたことを、夫はなんとも思っていなかったのかな、って」
「両親に申し訳ないと思うなら、どうして舅と姑に、〈子どもができないのは自分のせい〉だと、本当のことを話してくれなかったのか…。耐えてきた私ひとり、ばかみたいじゃないですか…」
この一件以降、鈴木さんはどうしてもむなしい気持ちが消えないという。
相続で手にするのは「お金」だけではなく、何か大きな「家族への思い」でもあるのではないか。
「いっそ離婚したら、この気持ちはすっきりするのでしょうか?」
自分でも自分の気持ちが分からないと、鈴木さんはいう。気持ちの整理がつく日は来るのだろうか。
[参考資料]
法テラス「法定相続人とは何ですか。」
法テラス「遺言の内容と異なる遺産分割をすることはできますか。」
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