新型コロナウイルス感染症の蔓延により、リモートワークが急速に普及し、新しい「働き方」が台頭してきました。しかし、近年企業の一部ではリモートワークを廃止する動きがみられています。一体、廃止・減少の背景にはどんな問題があるのでしょうか。今回は東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、リモートワークとマネジメント問題について解説します。
“新しい働き方”として定着すると思いきや…コロナ禍を経た今になって、強硬な「リモートワーク廃止論」を示す企業が現れた理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

先進的なアメリカ系企業で「リモートワーク廃止論」が…いったいなぜ?

新型コロナウイルス感染症の騒動が収束して、かなりの時間が経過した今、リモートワークでもっとも進歩的といわれていたアメリカ系の企業でも、強硬なリモートワーク廃止論が出てきました。

 

ある世界的エンターテインメントの会社では、「週4回は絶対に出社するように」という指示が全従業員に通告されたとのことです。その話題は各メディアで広く取り上げられていました。

 

日本に比べて国土は日本の16倍あり、新しい制度に関して柔軟かつ先端を走っているイメージがあるアメリカ系企業で、このような議論はどこから出てきたのでしょうか。

 

コロナは収束まで3年ほどの時間を要しましたが、その期間を終え、さらに数年経過するなかで、企業独自の分析もかなり進んできているようです。そこでは次のような問題が論じられるようになっています。

 

「ピープルマネジメント」の問題とは

それはピープルマネジメント(インター・パーソナル・スキルの研鑽やそのスキルチェックをどうするのか)、(ロイヤリティの高い幹部候補を抜擢できるのか)についてです。

 

通信インフラの発達で、オンライン会議などのストレスはほとんどの方があまり感じなくなりました。むしろ通勤や出張などの移動時間の削減で、より仕事が効率的に進むようになったと歓迎している方も多いことでしょう。業種にもよるでしょうが、おおむね好感を持ってリモートワークに取り組まれていると思います。

 

しかし、そのような時間がコロナ以後5年ほど流れたことにより、Face to Faceあるいは数十人~数百人といったリアルな対人折衝の場面で、実際に人前に立ったときのインパクトを出せるのかということが見えにくくなってきたわけです。

 

いろいろな数字で補完して能力を推し量ろうという動きがあったと思いますが、そこが万全ではなかったのかもしれません。

 

リモートワークでも定量的、定性的、両方の側面から、働いている従業員の業績の管理や評価ができていたということも十二分にあるでしょう。

 

一方で、人を惹きつける魅力を持ち合わせているかどうか、あるいは、10年、15年先にその企業を背負って立つ、能力だけではないロイヤリティ、人間的魅力を併せ持った人材を本当に抜擢することができるのか。もしくは抜擢が進んでいるのか。そういったところに目を向けたときに、現経営陣側から見えない部分が出てきていると分析した会社が現れました。

 

つまり、従業員を縛りつけておくためにリモートを排除したのではなく、失われたリアルなコミュニケーションを重視するゆえにリモート廃止に踏み切ったのかもしれないのです。