企業によってリモートワークに対する捉え方はまったく違う
その一方で、これと180度違う方針を堅持している企業も多数存在します。これらの企業は、先ほどのリモートを廃止した企業が表明した懸念点、そういったものすべては今後の情報技術の革新、価値観の変化(リアルコミュニケーション以外はそもそも人間関係において重要な指標ではない)、こういう懸念さえ超越したマネジメントスタイルがまもなく現れるはずだから、そうした懸念は無用だとしています。
優秀な従業員に気持ちよく仕事をしてもらうにあたり、多くの方が望むであろうリモートワークを縮小すべきではないという、まさに革新と保守が完全に分かれているような、180度違う意見が出てきています。
日本でもいろいろな業種で、業界1位、2位がしのぎを削っている実例がありますが、とある業種における業界1位と2位がリモートワークに対するとらえ方で180度まったく違うケースがあります。参考までに具体的な事例をご紹介してみたいと思います。
企業別リモートワークの捉え方(実例)
以下はある会社の最近の発言です。
「リモートワークで失ったものはリモートワークで取り返すべき。反省点は山ほどあるが、これからの時代背景を考慮し、ますます完全リモート化を進める。役員を含め、すべてフルリモートで対応する」
次はその会社を追随する業界2位の会社の発言です。
「リモートは廃止。人は性悪説で見なければならない。人はサボるものである。自宅で仕事をすると、会社で仕事をしているときより確実に生産性が落ちている」
だから出社させないとダメなのだと断言しています。この2社は業界1位と2位のライバル企業で、しのぎを削って争っている会社です。
それがまったく反対側の観点で発言しているところが興味深いと思います。私が考察するに、どちらが正解か間違いかは文化的な要素もありますから、はっきりわかることではありません。
ただ注目しているのは、このリモートを推進している業界1位の会社は、今後も少子高齢社会であり続ける日本において、従業員の快適性を今から徹底追求しなければ、優秀な人材に選んでもらえなくなるだろうということが透けて見えているのではないかと思います。
一方の2位の会社は、そういう従業員に対する忖度自体が企業の体質を弱くさせる、おそらくそういう前提に立っているのでしょう。このように性善説と性悪説に見事に分かれています。どちらも社名を出せばだれでも知っている有名企業ですが、あえてここでは伏せておきます。
この業界1位の企業は週休3日を一番最初に持ち出した会社です。リモートワークの判断は採用が困難になり、人材獲得合戦が熾烈になる今の世相を映し出しているものと推察されます。リモートワークとマネジメントについては今後も注視していきたいと思います。
福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長