こんなはずじゃなかった! 平成半ばに勃発した「アクティブシニア」バブル…〈業界総出〉で乗り出した「アクティブシニアマーケティング」が“大失敗”に終わったワケ

こんなはずじゃなかった! 平成半ばに勃発した「アクティブシニア」バブル…〈業界総出〉で乗り出した「アクティブシニアマーケティング」が“大失敗”に終わったワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

2000年代前半、日本のマーケティング業界では「アクティブシニア」というキーワードが席巻。今後急増するであろう積極的な消費をするシニア層を狙い、広告代理店は数多くの広告・キャンペーンを打ち出していました。しかし、そこには誰もが見逃していた“落とし穴”があって……? 本稿では、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを務めた経験もあるマーケティングアナリストの原田曜平氏による著書『「シニア」でくくるな! "壁"は年齢ではなくデジタル』(日経BP)から一部抜粋して、当時の「アクティブシニアマーケティング」が大失敗した原因について解説します。

読み違えた、アクティブシニアマーケティング

結果、どうだったのか。結論から言うと、業界関係者が描いた青写真通りにはまったくいかなかった。確かに高齢者の人口ボリュームは増え続けた。だが、そうして増加していった高齢者を全体的に見ると、必ずしも「アクティブ」にならなかった。

 

一部の層を除き、豪華客船に乗ってクルーズなどしないし、海外旅行にも思ったほど頻繁に行かなかった。期待していたほど消費が爆発しなかったのである。

 

大きな誤算だった。笛吹けども踊らずの状況が続く中、マーケティングや広告の費用対効果は悲惨な状況で、マーケターも広告パーソンも、そして多くの資金をつぎ込んだ企業も、大半のゲーム参加者が肩透かしを食らった。アクティブシニアマーケティングは完敗したのだ。

 

読み違いはどうして起きたのか。理由の一つが、多くの企業が高齢者をひとくくりにしてしまったことだ。

 

一般的に65歳以上を高齢者(シニア)という。広告業界では、通常、M1=男性20〜34歳、M2=男性35〜49歳、M3=男性50歳以上、F1=女性20〜34歳、F2=女性35〜49歳、F3=女性50歳以上などとターゲットを分類する。

 

さらに、より細かく、年齢や性別、居住地、家族構成、職業、年収、価値観、ライフスタイルなどをまるで実在する人物のように設定して、商品やサービスのペルソナマーケティングを行うこともある。つまり、セグメントを行い、マーケティング戦略に生かしているわけだ。

 

しかし、当時のアクティブシニアマーケティングはターゲットを「高齢者」として一緒くたにしてしまった。本来であれば下の世代と同様にセグメントし、ターゲットとなる世代を見極め、必要に応じて細かくペルソナを設定すべきところだ。

 

しかし、誰にとっても、本格的な高齢者マーケティングは未経験かつ未知数だった。

 

唯一分かっていたのは、高齢者が増え続け、あと10年もすれば団塊の世代という巨大な固まりが乗っかり、市場が膨張するという未来図だけだっだ。それを唯一のよりどころとして、アクティブシニアという希望的観測に突き動かされ、わき目もふらずまい進した。

 

結局、そうした大ざっぱな高齢者マーケティングが失敗を招いた。

 

 

原田 曜平

マーケティングアナリスト/芝浦工業大学デザイン工学部教授

 

「シニア」でくくるな! "壁"は年齢ではなくデジタル

「シニア」でくくるな! "壁"は年齢ではなくデジタル

原田 曜平

日経BP

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