広い邸宅に暮らす90代の母親はがんを患っており、70代~60代の子どもたちも真剣に相続を考えるタイミングとなりました。しかし、母親の希望と子どもたちの考えが合わず、話し合いの席は大混乱に…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。
「自宅の独り占めは困る」と兄が…
佐藤さんの母親は自宅不動産に愛着をもっており、売却を嫌がっています。
「兄と姉は全員自宅を保有していますが、私は実家近くの賃貸暮らしです。また、母親のサポートに関わっているのはほとんど私です。母からは〈あなたが継いでくれればねぇ…〉といわれているのですが…」
そして先日、母親は佐藤さんと兄の2人を自宅に呼び出しました。
「母は兄と私だけ呼び出し、相続について〈不動産は二男に継がせたい〉という、母なりの考えを話しました。兄はその場では黙って聞いていましたが、帰りの車のなかで〈母親の面倒を見てくれるのはありがたいが、不動産の独り占めは困る〉といわれてしまいまして…。それに、姉2人にこの話がもれたら、大変なことになりそうです」
目指す着地は「不満の出にくい分割・不動産の有効活用」の両立
佐藤さんの悩みに、提携先の税理士は次のような提案を行いました。
①小規模宅地の特例が適用できるのは330m2までなので、敷地のおよそ半分に自宅を建て替え、それを佐藤さんが相続する。自宅の奥に戸建ての貸家を3棟建て、それを長男・長女・二女が相続する。
②敷地の半分に自宅を建て替え、佐藤さんが相続する。それ以外の部分は売却して、長男・長女・二女でお金を分ける。
③全部を売却し、自宅と区分マンションに買い替え、きょうだい全員で分ける。
佐藤さんはこの3つの案について、母親ときょうだいとともに検討することにしました。
いずれにしろ現状維持では問題が多く、建て替え・買い替えのいずれかが選択肢となるといえます。そのうえで分割を検討し、遺言書を作成することになります。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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