多死社会の日本、相続の発生は右肩上がりに
国税庁の資料によると、令和4年分の被相続⼈数(死亡者数)は156万9,050⼈(前年対⽐109.0%)、そのうち相続税の申告書の提出に係る被相続⼈数は15万0,858⼈(同112.4%)、その課税価格の総額は20兆6,840億円(同111.3%)、申告税額の総額は2兆7,989億円(同114.6%)でした。
高齢化・多死社会の日本では、相続の件数も毎年増加傾向にあり、またそれに伴い、多くの相続トラブルも発生しています。
横浜市在住の鈴木さん(仮名)は50代で、同い年の夫と2人暮らしの専業主婦。鈴木さんの夫は、妹と2人きょうだいです。
妹は20代前半で結婚して1児をもうけましたが、離婚。その後再婚して1児をもうけたが、再び離婚しました。子どもたちが大きくなったいま、契約社員として働きながら、都内の単身用アパートでひとり暮らしをしています。
舅姑は自由奔放な娘に手を焼いており、鈴木さんもよく愚痴を聞かされました。しかし、義妹はそんな親の気持ちにはわれ関せずといった感じで、友人と出かけるといっては、子どもたちを無理やり実家に預けるなどしており、腰の悪い姑に代って、鈴木さんが子どもたちの面倒を見ることもありました。
「舅姑が、好き勝手にふるまう義妹のことを愚痴りながら、コッソリ援助しているのは知っていました。でも、親ですから。子どもはかわいいのでしょう」
鈴木さんは、そう思って自分を納得させてきたといいます。
面倒を見てくれる嫁へ、姑は遺言書の内容を打ち明けたが…
そんななか、3年前の冬、舅は自宅のふろ場でヒートショックを起こして死去。その後、しきりに寂しいと訴える姑のために、鈴木さんの夫は妹に自宅での母親との同居を打診しましたが、「面倒くさい、イヤよ」のひと言であえなく終了。
困り顔の姑のため、やむなく鈴木さん夫婦が定期的に通うことで対処しました。
腰が悪い姑は、通院などの介助が必要で、そのたびごとに鈴木さん夫婦のいずれかが車を出して付き添いました。そんな日は、丸1日を費やすことになります。認知症の症状がなかったのは幸いでしたが、それでも介助は楽ではありません。
しかし、姑はそんな鈴木さん夫婦の気持ちに気づいていたのでしょうか。ある日、病院から戻ったあと、コッソリ資産状況を明かしてくれたのです。
「この通帳はね、おじいさんから相続したお金。それからこっちが、私がヘソクリしたお金。散々手を焼いた、あのワガママ娘には何もやらないわ。これまで散々援助してきたのだから…。遺言書もちゃんと書くからね。どうか面倒をかけたことを許してね…」
姑が見せてくれた通帳には、合計2,000万円以上の残高がありました。サラリーマンの妻だった姑の年金は月15万円。自宅は横浜市港北区で、最寄駅から徒歩7分の角地の一戸建て住宅。恐らく数年の介護をしても、これらの資産がマイナスになることはないはず…。