再婚から数カ月で、父親急死
しかし、それからわずか数カ月で不幸が襲います。なんと春香さんの父親が、脳梗塞で突然死してしまったのです。
「お父さん、どうしてこんなことに…!」
突然の父親の死に動揺する春香さんでしたが、やるべきことはどんどん押し寄せ、葬儀、四十九日はあっという間に終了。その後、自然と相続の話になりました。
父親の法定相続人は、現在の配偶者である後妻と、父親の実子である春香さんの2人。遺言書はありませんでした。また、子どもたちはいずれも養子縁組していません。
「お父さんと再婚してわずか数カ月。まだ50代で現役の会社員なのだから、ここはそっと身を引いておしまいでしょ…」
春香さんは密かにそう考えていましたが、現実は甘くありませんでした。
女性は「私は正式な妻ですから」「ここは法律通りで」と、法定相続分をきっちり主張。春香さんはそれ以上言い返すことができず、自宅と現金で合計1億円の遺産の半分が再婚相手のものに。
「あなたはすでにご夫婦で暮らすおうちがあるのよね?」
「私、自分の家がないの。お父さんのこと、しっかり守るからここに住まわせて…」
後妻を前に、笑顔の父親を思い出し、出て行けとはいえなかったという春香さん。
「…わかりました。父をよろしくお願いします。でも、裏庭にはかわいがっていた柴犬のコロちゃんのお墓があります。梅の木がある一角だけは、はどうか触らないで…」
「わかったわ、大丈夫よ」
しかし、そんな女性の思いも粉々に打ち砕かれてしまいます。
「ハルカのお家がなくなっちゃって、私、寂しいよ~!(涙)」
地元の幼馴染から送られてきたラインをきっかけに、相続完了後、自宅はすぐに売却され、他人の手に渡ったことを知りました。しかも、近くに住む幼馴染の情報では、女性は父親から相続したお金と、家を売ったお金を持って、息子と暮らす家を建てるといっていたとのこと。
「あの家は、両親が力を合わせて買った家だったのに…」
春香さんの無念な気持ちはわかりますが、法律とはそういうもの。配偶者の法定相続分は遺産の半分であり、一度相続されたものは、相続した人の自由です。
再婚カップル、シニア婚が増えた昨今、春香さんのような思いをする人も、出てくるかもしれません。
[参考資料]
法テラス「法定相続分とは何ですか。」
税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
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