「突如相続したタワマン」だが…
タワーマンション(以下、タワマン)とは、基本的に地上20階建て以上、高さ60mを超える居住用高層建築物のことを指します。
高級感漂うイメージですが、実際の居住者に話を聞いてみると、「終の棲家にする気はない」「賃貸で束の間の暮らしを楽しんでいる」といった声が多く聞かれます。さらに深堀りしていくと「引っ越したい」という意外な意見まで……。
証券会社に勤める30代後半の山本さん(仮名)。新卒で入った会社で10年以上戦い抜き、順当に出世。現在の年収は800万円ほどです。タワマンに暮らしはじめたのは8年前のこと。相続で一室を受け継いだことがきっかけでした。
「不動産会社を経営していた父が亡くなったんです。母もすでに亡くなっているため、弟が会社、そして僕は父の所有していたタワマンを相続しました。正直会社を継ぐ気はさらさらなかったし、納得のいく遺産分割でした」
「タワマン節税」という言葉をご存知でしょうか。これにより、山本さんはお得なかたちで相続できたのかもしれません。
家やマンションの相続税申告額は、時価ではなく「相続税評価額」を使います。この評価額が低くなれば相続税も低くなるわけです。マンションの土地の相続税評価額は、部屋の床面積に応じる部分を持ち分とし、マンション全体の敷地にその割合を掛けることで算出します。住人全員で相続税評価額を割っているイメージです。
タワーマンションは特に部屋数が多いので額は低くなり、土地部分の価額は実勢価格と比較してかなり低くなります。この差を利用して節税しようとする仕組みを、タワマン節税と呼びます。
低層階でも高層階でも、床面積が同じであれば相続税評価額は同じになりますが、取引の際は高層階のほうが高値となるので、階が上の物件を購入したほうが相続税対策になると言われてきました。
しかし、こうした動きは国税庁から厳しい目を向けられています。平成29年には、高さ60メートルを超えるマンションについては、高層階ほど固定資産税の負担が大きくなるように法改正がなされました。
小規模宅地等の特例も、平成30年に改正されています。平成30年4月1日以後のものについては、特に賃貸物件の場合、購入から3年が経過していないと特例が使えないことになったのです。この税制の見直しは今後の規制を予見させます。いつまでも効果を期待していられるものではありません。