「総務の元気=会社の元気」という心得
総務部員は経営トップのスタッフという役割があります。したがって、社内からは「総務部員の発言や態度は経営者の意を体するもの」と思われがちなことがあります。このことをしっかりと自覚し、総務部員は常に公平公正に、そして「元気で快活」であるよう心がけなければなりません。
しかし、現実の仕事はというと、経営者と各部門の板ばさみになって苦慮することもあれば、ほかの社員には聞かせられないような経営者の愚痴を聞くこともあり、さらには社外から寄せられた様々なクレームに頭を悩ますこともあります。総務部は、いわば“苦情の集積場”的存在でもあります。
そのうえ、直接利益をもたらすわけではないデスクワーク、それもルーティンな仕事が中心なので、つい気も滅入りがちになることもあるでしょう。
だからといって意気が上がらない態度では、社内の人間から「社長の側近があんな状態ではこの会社はよくない状態にあるのでは?」と思われかねませんし、社外にしても、経営者の代理として接する総務部員に元気がなければ、「あの会社には何か問題があるのかも?」と勘ぐられることにもなりかねません。
経営者にしても、いざ難関を乗り切ろうというときに周りの総務部員に元気がなければモチベーションが上がりません。「総務の元気が会社の元気」と心得るべきです。
「スペシャリストであり、ゼネラリストでもある」という自覚
総務部員は会社によっては、経理・労務・広報・人事・経営企画等々の専門業務をこなさなければなりませんが、それらの業務を十分にこなすには企業活動全体のことを知っておかねばなりません。
例えば、各部門から回ってきた出金伝票を処理するにしても、その数字がどのような企業活動の結果生じたものかがわかっていなければ、単なる“簿記係”にすぎず、本当の経理担当ではありません。時間外労働の賃金計算にしても、それが必要な時間外労働なのかにまで気が回らなければ、単なる“計算係”にしかすぎず、本当の労務管理担当とはいえません。
となると、総務部員は担当業務についてはスペシャリストでありながらも、企業活動全般が理解できるゼネラリストでなければならないということです。
残念ながら「総務部は稼ぎどころの現場(ライン)の事務・雑用係」と考える社員がいる会社もあります。しかし、組織というものは後方支援があるからこそ前線が活躍できるのです。
会社全体の状況をリアルタイムで把握しながら、経営トップにアドバイスすると同時に、現場が動きやすいように微に入り細にわたり適切な対応を行うのが総務部です。
そのため、総務部員は担当業務についてはスペシャリストであると同時に、企業活動全般を俯瞰できるゼネラリストであるという自覚を持つことが大切になるのです。
下條 一郎
元「月刊総務」代表兼編集長。東京都立九段高校、立命館大学文学部卒業後、株式会社池田書店入社。同社で書籍や雑誌の編集等を経た後「月刊総務」の出版権を引き継ぎ独立、株式会社現代経営研究会を創業。同誌を日本唯一の総務専門誌に育て上げる。同誌発行の傍ら、総務実務等のセミナー講師、経営やビジネス実務に関する勉強会を主宰。上場企業経営者をはじめ著名作家、大学教授、メディア関係者等多彩な人的ネットワークを持つ。総務およびビジネスマナー等ビジネス実務に関する書籍を多数執筆。
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