フィリピン「最低賃金引上げ」思わぬ余波…失業率、さらなる悪化を懸念

5月13日週「最新・フィリピン」ニュース

フィリピン「最低賃金引上げ」思わぬ余波…失業率、さらなる悪化を懸念
写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、フィリピンにおける雇用状況の現状を解説していきます。

2024年3月期「比・製造業」はマイナス成長

一方で、最低賃金の引き上げには、フィリピン経済の大きな部分を占める中小企業にとっては懸念材料でもあります。

 

フィリピンの統計局によると、フィリピンの製造業活動は3月に0.8%減少しており、23ヵ月ぶりの悪化となりました。2月の7.2%増から一転してマイナスです。生産額の急減は材料費の上昇と内需の軟調さの影響だと分析され、潜在的に需要が弱まっていることを示唆します。前月比では、製造業の生産は0.8%増となりましたが、季節要因を取り除いた調整済みの数値で見ると、工場生産は4.7%減少しています。また四半期ベースでは、生産成長率は昨年同期の5.5%から3%に鈍化しました。これは、インフレ、高金利、世界的な経済の先行き不透明感によるものだと見られます。

 

インフレは4月に3ヵ月連続で上昇し3.8%。これを受け、フィリピンの中央銀行は利下げを延期すると市場は予想しています。フィリピン中央銀行の政策金利は、2022年5月から2023年10月にかけて450ベーシスポイント(bps)引き上げられ、17年ぶりの高水準である6.5%となっています。

 

フィリピン商工会議所(PCCI)のバルセロン会長は、3月の製造業のマイナス成長は小売部門の需要軟調、ペソ安ドル高による輸入コストの上昇が要因だと述べています。また、弱い市場状況では、メーカーはコストを製品価格に転嫁することができなかった点も指摘し、今年の工場生産成長率は鈍化すると予想しています。

 

一方で、フィリピン統計局の報告書とは対照的に、S&PのPMI(購買担当者景況指数)は3月が50.9で、工場活動は緩やかではあるが拡大していることを示唆しています。50を超える数値は製造業活動の拡大を示し、50未満は縮小を示します。この指数は4月には52.2となり、5ヵ月ぶりの高い数値を示しています。

 

※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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