中小企業経営者が知っておきたい「第三者承継」を成功に導くM&A戦略…事業譲渡・株式譲渡・企業価値評価の概要【公認会計士が解説】

中小企業経営者が知っておきたい「第三者承継」を成功に導くM&A戦略…事業譲渡・株式譲渡・企業価値評価の概要【公認会計士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

後継者不足に悩む日本の中小企業の多くは、M&Aに関心を寄せています。ここでは、M&Aによる第三者承継に焦点を当て、M&Aによって企業価値を最大化させる方法や、事業譲渡から株式譲渡、企業価値評価等の概要について見ていきます。メガバンク出身の公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

企業価値を決定する方法

企業価値を決定する方法はいくつかあります。M&Aで使用されるものは、「インカム・アプローチ」「マーケット・アプローチ」「コスト・アプローチ」の3つに大別されます。

 

M&Aの交渉においては、「譲渡し側」と「譲受け側」の価値評価が異なることが一般的です。「譲渡し側」は事業を高く売却したいと考え、「譲受け側」は事業を安く買収したいと考えるため、初期的な段階ではお互いの価格目線が一致しないことがよくあります。

 

また、情報の非対称性が交渉を複雑にします。「譲渡し側」は自社の情報を熟知していますが、「譲受け側」はそれを完全には把握できていません。そこで、デュー・ディリジェンスを実施することで、「譲受け側」が可能なかぎり多くの情報を入手し、最終的な条件交渉に活用するのです。

 

M&Aの目的はシナジー効果、すなわち2つ以上の企業が統合することによる相乗効果です。これによって、単独で事業を行うよりも大きな価値を生み出すことが期待されます。この効果には、売上の増加、コスト削減、研究開発の効率化、財務状況の改善などが含まれます。M&Aによって新たな企業価値を生み出すことが期待されるのです。

 

企業価値とは、事業価値に非事業資産の価値を加えたものです。また、株主価値は、事業価値から有利子負債などを差し引いた、株主に帰属する価値を意味します。

 

M&Aにおいて「譲受け側」が使う価値評価の手法はDCF法です。これは、将来のフリーキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する方法です。この方法には多くの見積もりや予測が含まれるため、一定の恣意性が介入する可能性があります。

 

また、マルチプル法すなわち類似上場企業比較法が使われるケースも多く見られます。これは、類似する上場企業のデータを基に、EBITDAマルチプル、PBR、PERを使用して価値を評価する方法です。比較的シンプルで直感的に理解しやすい方法であるため、金融機関が好んで使用しています。

 

純資産法では、貸借対照表の純資産を株式価値と見なして評価する方法ですが、そのうち時価純資産法では、資産と負債を時価で評価し直します。

 

あと、M&A仲介業者が好んで使う方法として、年買法があります。これは、純資産法に基づいた株式価値に、のれん代として営業利益の3年から5年分を加算する方法です。計算がシンプルであることから、中小企業のM&Aにおいてよく使用されています。

 

企業価値の算定には複数の方法があるため、状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。

M&A専門機関の手数料体系は「レーマン方式」が一般的

M&A専門機関の手数料体系は、とくに決まったものがありませんが、レーマン方式が採用されるケースが多いようです。

 

レーマン方式とは、M&Aにおいて、M&A仲介業者やファイナンシャル・アドバイザーが受け取る成功報酬を算出するための計算方法です。報酬基準額に対して報酬料率を乗じて算出されます。この方式は、基準額を株式価値とするか企業価値とするによって、成功報酬額が大幅に変動する特徴があります。

 

[図表]レーマン方式の計算方法

 

 

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

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【プライベートバンカー(PB)試験対策】「第三者承継を成功に導くM&A戦略:事業譲渡から株式譲渡、企業価値評価まで」

 

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