大手民間企業の株の半分を日銀が保有~「特殊すぎる」ねじれた日本経済~
2023年5月17日、日経平均株価が3万円台を回復しました。3万円超えは1年8ヵ月ぶりであり、日本経済に関しては珍しく明るいニュースとなりました。
しかし、日本の株価についても相変わらず不安材料が眠っています。というのも、日本の株価は〝官製相場〟と呼ばれており、日銀が日本の株式に莫大な投資を行った結果、この株価になっているからです。
日銀は、「株価安定」という名目の下、日本株式のETF(上場投資信託)の買い入れをつづけており、2020年3月まで時価31兆1,728億円ものETFを日銀が保有する事態になっています。『日本経済新聞』(2019年4月17日付)によると、日銀は今や上場企業23社の筆頭株主であり、しかも全上場企業の5割で上位10位以内の大株主なのです。日本の上場企業の多くが、ある意味で国営企業になりつつあるという、異常な状況が生まれています。
さらに、コロナ禍での株価安定のために、2020年3月16日に行われた金融緩和では年間6兆円としていたETFの買い入れ額を倍の12兆円まで引き上げました。そして、今では日銀が買い入れたETFの時価は51兆円強まで増えており、これは旧東京証券取引所第一部の株式の時価総額の約7%に相当する水準です。
前述したとおり、日銀は利上げに踏み切れず、保有している国債からの金利には期待できません。そのためETFからの収益は日銀の経常利益を支える重要な柱となっているのですが、株価が急落してしまえば、日銀は危機に陥る可能性があります。ETFは時価評価されることになっているので、簿価を下回れば損失に相当する引当金を計上しなくてはなりませんから、株価の下落によって日銀の財政は赤字に転落してしまうのです。
日銀のもっている株を売るとどうなるか?
では、日銀は株価が下がる前に株式を売ればいいかというと、ここにも問題があります。アベノミクスが始まってから実際に日本の株価は上がってきているので、そうした株式を日銀が手放すとなれば株価は下がってしまいます。そうなれば株主を中心に批判が巻き起こることは必至ですから、日銀としては批判をおそれて、売却をしにくいのです。
「危険な賭け」の行方に注目
ここまでの話をまとめると、日銀は株を保有し続けても、売却しても、問題に直面します。もっとも、このような問題が起きることは最初からわかっていたことであり、だからこそ、世界の主要中央銀行は、コロナ禍などの未曾有の危機のなかにあっても日銀のような株式ETFの買い入れには決して手を出しませんでした。
日銀が行ったETF買い入れには「これが正解」という出口戦略がなく、どのような形で結末を迎えるのかは、誰にも予想できません。私たちはアベノミクスがスタートした頃から「危険な賭け」と考えていましたが、その結果はこれから明らかになることでしょう。
髙島一夫
株式会社T&T FPコンサルティング
代表取締役社長CFP
髙島宏修
株式会社T&T FPコンサルティング
取締役CFP
西村善朗
株式会社ユナイテッド・パートナーズ会計事務所
代表取締役税理士
森田貴子
株式会社ユナイテッド・パートナーズ会計事務所
パートナー税理士
注目のセミナー情報
【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション
【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
