フリーランスとして働く場合、「価格設定」は収入に直結するため非常に重要です。しかしながら、知人からの依頼などで相場より安い「友達価格」で仕事を引き受けてしまうこともあるでしょう。そこで本記事では、クリエイティブ分野に特化したリーガルサポートを行っている弁護士の宇根駿人氏・田島佑規氏による著書『クリエイター六法 受注から制作、納品までに潜むトラブル対策55』(翔泳社)から一部抜粋して、友達価格から「通常価格」への交渉をスムーズに行うコツについて解説します。
予防策
友人関係だからこそ、条件をはっきりと
仮に、Xさんが採用ページに掲載する会社紹介動画を受注する際に、「正直、これだと相場の半分くらいの予算感で厳しいけど、駆け出しの私に声をかけてくれてありがたかったし、Y社の応援の意味も込めて、今回限定で特別に友達価格で引き受けるよ!」と伝えていたらどうでしょうか?
仮に、Zさんが安く使ってやろうと思っていたのであれば、2回目に声がかかることはなかったでしょうし、また、どうしても予算が厳しいのであれば、「何とか今回も特別に友達価格でお願いできないか」という旨の連絡が来るなど、もやもやが残るやりとりを防げた可能性はあるでしょう。
知人からの案件は、お互いがお互いを思って受発注を行うこともあり、お互いの信頼関係をベースに取引が行われます。そのため、一度トラブルになってしまうと、ビジネスライクな対応を超えてお互いが感情的になり、収拾がつかなくなることが少なくありません。
「信頼している知人からの案件だから詳細に意図を説明したり条件を詰めたりしなくてもわかってくれるだろう」と思うことなく、知人からの案件だからこそ、きちんと説明し条件を確認することをおすすめします。
■ワンポイントアドバイス
類似のケースにもある通り、特に駆け出しのころは相場より安い金額でやってほしいと依頼を受けることはよくあります。
実績作りなどを考慮して安く受注する分には何ら問題ありませんが、その際にはきちんと相場より安い金額であるということや今回限りの特別価格であることを見積書などで明示しておきましょう。
次回受注する際に、通常価格での受注を交渉しやすくなります。
宇根 駿人
大道寺法律事務所
弁護士
田島 佑規
骨董通り法律事務所
弁護士
大道寺法律事務所
弁護士
滋賀県長浜市出身。滋賀県立彦根東高等学校・京都大学法学部卒、京都大学法科大学院修了(法務博士)。共栄法律事務所を経て、ITベンチャー企業へ転職。その後、独立し現職(大道寺法律事務所パートナー)。
企業で社内弁護士として勤務した経験から、現在はインハウス法務の受託を主に取り扱う。主なクライアントとしては、音声配信プラットフォームを運営する企業やマンガ配信プラットフォームを運営する企業、プライバシーテックを取り扱う企業など。
X(旧Twitter):@hayato_une
note:https://note.com/unehayato
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連載トラブルから身を守る! クリエイターなら知っておきたい『クリエイター六法』
骨董通り法律事務所
弁護士
大阪府高槻市出身。洛南高等学校・神戸大学法学部卒、京都大学法科大学院修了(法務博士)。弁護士法人淀屋橋・山上合同を経て、現在、骨董通り法律事務所メンバー。
出版、映像、演劇・ライブイベント、音楽、デザイン等のクリエイティブ・エンタテインメント分野における法務サポートを中心的に行う。共著として『エンタテインメント法実務』(弘文堂)、『はじめての演劇』(日本演出家協会)、『10歳からの著作権』(Gakken)〔監修〕ほか。京都大学法科大学院・芸術文化観光専門職大学非常勤講師なども務める。
X(旧Twitter):@houjichazuki
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