(画像はイメージです/PIXTA)

会社を承継する場合、後継者に会社の株を集約する必要がありますが、株式の価格によっては後継者個人の資金では対処できないケースもあります。そのような場合、株式を会社が買い戻す「自己株式の取得」を行うことが考えられ、それに向けてのやり方や注意点を見ていきます。本連載は、事業承継士・中小企業診断士の中谷健太氏の著書『「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本』(あさ出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

◆株主を特定せずに取得する場合

株主を特定せずに取得するスキームは、下記のとおりです。

 

1.取得に関する事項の決定(株主総会の普通決議)

 

●取得する株式数

●取得と引換えに交付する金銭等の内容およびその総額

●取得することができる期間

 

2.取締役会において下記を決定

 

●取得する株式数

●1株の取得と引換えに交付する金銭等の内容および額(またはその算定方法)

●取得と引換えに交付する金銭等の総額

●株式譲渡の申込期日

その上で、全株主に譲渡の機会を与えるため、これらの事項を株主に通知または広告

 

3.譲渡を希望する株主から株式数を明示して譲渡の申込みがなされることにより、自己株式を取得

 

※ただし、譲渡の申込数が取締役会において定められた取得する株式数を超えた場合には、譲渡を申し込んだ株式数に応じた按分比例により、自己株式の取得が行われる。

 

◆株主を特定して取得する場合

特定の株主から自己株式を取得する場合には、株主平等原則の観点から「売主追加請求権」という権利を認めています。そのため、決議を行う際に他の株主に対しても。「売却を希望する場合には希望する売却数等の申出を行う」ように知らせなくてはなりません。

 

売主追加請求権を無効にしたい場合には、定款の変更を行う必要があり、特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の3分の2以上の賛成)を行います。

 

スキームは下記のとおりです。

 

1.原則として、2の株主総会の2週間前までに株主全員に対して「売主追加請求」を行使できる旨を通知

 

※2の株主総会の2日前までに、株主は会社に対して「特定の株主」に自己を加えたものを議案とするよう請求できる。

 

2.取得に関する事項の決定(株主総会の特別決議)

 

●取得する株式数

●取得と引換えに交付する金銭等の内容およびその総額

●取得することができる期間

●会社法158条に基づく通知を特定の株主に対して行う旨

 

3.取締役会において下記を決定

 

●取得する株式数

●1株の取得と引換えに交付する金銭等の内容および額(またはその算定方法)

●取得と引換えに交付する金銭等の総額

●株式譲渡の申込期日

そのうえで、決定した株主に譲渡の機会を与えるため、これらの事項を株主に通知または広告

 

4.譲渡を希望する株主から株式数を明示して譲渡の申込みがなされることにより、自己株式を取得

 

※ただし、譲渡の申込数が取締役会において定められた取得する株式数を超えた場合には、各株主が譲渡を申し込んだ株式数に応じた按分比例により、自己株式の取得が行われる。

次ページ 非協力的な株主を排除する「スクイーズアウト」のやり方

※本連載は、中谷健太氏による著書『「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本』(あさ出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本

「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本

中谷 健太

あさ出版

「子への承継」に軸足を置いた、中小企業の事業承継のための実務書。どの経営者にとっても、最大のミッションの一つである事業承継。 「できるなら子に継いでほしいが、承継意欲のない子をどうすればいいか」 「実績も見通…

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