(※写真はイメージです/PIXTA)

チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)が解説します。

 

●東証は、1月から要請への取り組み開示企業の一覧表を公表、最新分は3月15日に公表された。

●開示はプライム市場で着実に進展しているもののスタンダード市場の進展はかなり遅れている状況。

●投資家の関心は取り組みの開示から中身へ、東証が示す好事例増なら株高はより持続されよう。

東証は、1月から要請への取り組み開示企業の一覧表を公表、最新分は3月15日に公表された

東京証券取引所(以下、東証)は昨年3月末に、プライム市場およびスタンダード市場の全上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を行いました。要請に基づき取り組みを開示している企業について、東証は今年1月から一覧表を作成して企業名を公表していますが、3月15日に最新の一覧表が公表されたため、以下、ここまでの開示状況を確認していきます。

 

なお、一覧表は、月末時点で直近のコーポレート・ガバナンス(CG)報告書に基づき更新され、翌月15日を目途に毎月公表されます。CG報告書に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」という文言があれば「開示済み」、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(検討中)」という文言があれば「検討中」として集計され、いずれの文言も記載がなければ一覧表には掲載されません。

開示はプライム市場で着実に進展しているもののスタンダード市場の進展はかなり遅れている状況

今回3月15日公表の一覧表では、プライム市場1,657社のうち、開示済みは786社(47%)、検討中は183社(11%)、記載なしは688社(42%)となりました。前回2月15日公表の一覧表と比べると、開示済みは60社増、検討中は10社増、記載なしは68社減となりました(前回は1,655社)。東証は昨年8月29日に初めて開示状況を公表しましたが(企業名は公表せず)、それ以降、企業の取り組み開示は着実に進展しています(図表1)。

 

[図表1]プライム市場の開示状況

 

一方、スタンダード市場に目を向けると、今回3月15日公表の一覧表では、スタンダード市場1,611社のうち、開示済みは219社(14%)、検討中は129社(8%)、記載なしは1,263社(78%)となりました。前回2月15日公表の一覧表と比べると、開示済みは19社増、検討中は4社増、記載なしは25社減となりました(前回は1,613社)。スタンダード市場の開示は、プライム市場に比べ、かなり遅れています(図表2)。

 

[図表2]スタンダード市場の開示状況

投資家の関心は取り組みの開示から中身へ、東証が示す好事例増なら株高はより持続されよう

このように、企業の取り組み開示は全体では進展しているものの、プライム市場とスタンダード市場ではその度合いに差がみられます。なお、東証が初めて開示状況を公表した昨年8月29日から昨日3月26日までの期間、東証プライム市場指数は20.8%、東証スタンダード市場指数は14.2%、それぞれ上昇しました。必ずしも開示の進展度合いが影響しているとは限りませんが、少なくとも積極的な取り組み開示は投資家に好ましい材料といえます。

 

なお、東証は2月1日、投資者の視点を踏まえた「資本コストや株価を意識した経営」のポイントと事例を公表し、投資家から一定の評価を得た取り組みの好事例を示しました。企業の取り組みの開示は今後も進展していくとみていますが、投資家の関心は、次第に取り組みの「開示」から「中身」に移っていくと思われるため、東証が示したポイントや事例に沿った取り組みを行う企業が増えれば、株高の持続性はより高まると考えています。

 

(2024年3月27日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『プライム市場は「開示済み」47%…東証が示す“好事例”増加なら、株高はより持続されよう【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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