前回は、地域通貨事業のモデル事例として、岩手県盛岡市の「MORIO─J」について取り上げました。今回は、北海道苫小牧市の「とまチョップポイント」について見ていきます。

発行の対象は福祉、健康・スポーツ分野

事例③【北海道苫小牧市(とまチョップポイント)】

 

通貨プロフィール:とまチョップポイントは、北海道苫小牧市で2016年8月にスタートした地域ポイントサービスで、まずは市が主体となって初年度でも最低100の行政サービスにポイント発行を行う予定です。

 

発行の対象となるのは主に福祉分野と健康・スポーツ分野です。市のイベントや雪かきなどボランティア活動、公共施設の利用などでも貯まります。獲得したポイントは市内の店舗で使用することができます。2016年度から3年間で事業としての効果を検証します。

 

苫小牧市の取り組みは、2016年の8月に始まりましたが、その取り組みの先駆性において参考になることも思いますので概要計画をご紹介させて頂きます。

 

苫小牧市は、2015〜19年度にかけて人口減少対策を主とする総合戦略(5カ年計画)を実行しています。そのなかで主要施策の一つとして位置付けたのが地域通貨(コミュニティポイント)の事業で、ポイントの普及と流通を通じて地元の魅力の強化や地域外からの移住促進に取り組みます。ポイントの名称は市の公式キャラクターである「とまチョップ」にちなみ、「とまチョップポイント」と名付けられました。

 

ちなみに、とまチョップは苫小牧の地域コンテンツを集めており、市内の子ども会議の活動の中で生まれたそうです。白鳥・花ショウブ・ホッキ貝・ハスカップ(苫小牧市の花)が、キャラクターに盛り込まれています。

ポイントの利用・発行で「市の行政予算」が地域で循環

とまチョップポイントスキームにおける市の役割としては、ポイントの運営管理業務の受け皿となる商店街振興組合連合会に予算を拠出して支援することです。振興組合連合会は、地元のフリーペーパー発行会社オーティス社と契約して、加盟店の募集やポイントの運用・管理・精算などを行います。

 

住民に対しては市のイベント、健康教室、ボランティア事業などに参加した人や、公共施設を利用した人に対してポイントを発行し、利用者はそのポイントを1ポイント1円として地元の商店など加盟店での買い物などで使ったり、景品などと交換したり、市や地域のNPOなどへ寄付することも現在検討しています。

 

スキームはとてもシンプルでわかりやすいといえるでしょう。住民は市や市が主体となる活動に興味・関心を持ちやすくなりますし、ポイント獲得が地域内のいろいろな活動への積極的参加のモチベーション(動機)になります。ポイントはインセンティブとしての機能を果たしますが、ポイント獲得自体は目的ではなく、きっかけになるのだと思います。

 

地元商店はとまチョップポイントの利用・発行による利用者の増加が期待できます。市の行政予算もこのとまチョップの仕組みを通して、地産地消される形で循環するという構図です。

 

初年度となる2016年度の予算(関連事業費)は約9000万円でその内国の地方創生加速化交付金3900万円を活用します。ポイント原資は事務局手数料含めて2160万円を計上しています。少なくとも、1000万円は、必ず地元の店舗でタンス預金になることなく利用されることになります。2018年度までの3年間を事業期間として効果を検証します。

 

カードは、めぐりんマイルやMORIO─Jと同様にイオングループのWAONカードを採用。商店街と大型店の共存により地域経済を活性化させることも市が掲げる目的の一つに掲げています。また、イオンからはWAONで決済した金額の一部が苫小牧市に寄付されます。

本連載は、2016年9月9日刊行の書籍『地域通貨で実現する 地方創生』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地域通貨で実現する 地方創生

地域通貨で実現する 地方創生

納村 哲二

幻冬舎メディアコンサルティング

本書は、地域活性化に興味のある人や自治体・企業・団体に向けて、地域活性化のための1つの有効な手段と思われる「地域通貨」を軸にした、事例紹介を含めた参考書・指南書です。 地域活性化は都市・地方の双方にとって喫緊の…

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