カードホルダー数は8万人を超えるまでに増加
事例②【岩手県盛岡市(MORIO─J)】
通貨プロフィール:MORIO─Jは、岩手県盛岡市の商工会議所が中心となり盛岡ValueCity株式会社を設立したところからスタートしています。代表取締役社長、副社長には商工会議所の会頭、副会頭が各々就任。市内商店街のほか盛岡市も株主として出資しています。
サービス開始時の加盟店は99店舗でした。スタートから1年で加盟店は200店舗に近づき、カードホルダー数は8万人を超えるまでに急増しています。ポイント発行数も、月間170万ポイントに達しています。当面の目標は10万枚と加盟店300店舗ですが、最終的には500店舗を目標としています。
地域通貨の発行・運用会社は自治体の出資で設立
地域コミュニティポイントMORIO─J(モリオJ)カードを発行する盛岡ValueCityは、商店街や大型店などが参加する盛岡商工会議所のまちづくり懇談会から生まれました。地域通貨の発行・運用などを目的として商工会議所と盛岡市という自治体が出資して株式会社を設立し、実施している盛岡のケースは全国でも大変珍しいものです。
ちなみに、モリオというのは宮沢賢治の作品の中の盛岡を示す町の名前とのことです。JはJAPANを意味し、MORIO─Jのモデルを盛岡だけでなく、岩手県全体や北東北、そして全国の範となるような事業にするという壮大なヴィジョンを表現しています。
懇談会での元々の議題は地域で共通駐車券のサービスを導入することでした。そこから自動精算機に対応する電子マネーの検討、住民サービスにつながるポータルサイトの設立、サイトと連携した地域カードの導入へと議論が広がり、約3年を経てMORIO─Jが誕生。カードや地域ポイントの発行やWEBサイト運営を担う会社設立へとつながっています。
MORIO─Jが誕生した背景にも、強力なリーダーの存在があります。地域通貨の必要性を理解し、その導入を検討する議論の中心となり、地域の店舗に地域通貨の加盟を呼びかけたのは、盛岡商工会議所の副会頭でした。玉山哲さんという方です。サービス開始にあたり、経済産業省から商店街まちづくり事業補助金、地域商業自立促進事業補助金が受けられるようになったのも、副会頭や商工会議所の幹部が何度も経済産業省や中小企業庁に出向いた成果といえます。
地元自治体である盛岡市とも深く関わっています。この点は、盛岡市が盛岡ValueCityに出資していることからもわかるでしょう。
ポイントの利用が地域の活性化に繫がる
サービス面では、例えば地域活性化のための祭りやイベントに参加したり、高齢者が運転免許証を返却したりした場合などにMORIO─Jポイントが発行され、そのポイント原資は市が負担します。
普及に向けた協力・提携の面では、盛岡市、盛岡商工会議所、カードの発行や販売促進を担うイオングループの三者がMORIO─Jカードを活用した地域活性化に向けて地域連携協定を結んでいます。これは、盛岡市が目指すスマートシティの実現や、そのために不可欠な地域振興、地産地消の推進、特産品の販売、観光振興などの点でお互いに協力し合うという内容のものです。
盛岡市のスマートシティ構想はITを活用して地域の生活・観光情報などを提供するまちづくりのことで、MORIO─Jポイントはそのためのツールの一つとして、商店街での買い物、公共施設の利用、交通機関の利用、地域スポーツの応援など幅広い用途に使われることを目指しています。
協定のなかにはMORIO─Jカードで電子マネーWAONで決済した金額の一部をイオンから盛岡市に寄付することも盛り込まれています。つまり、MORIO─Jカードでポイントを貯めたり使ったりすることも地域のためになりますし、WAONで買い物などをした場合も地域のためになるというわけです。
盛岡商工会議所は、東北の復興を目指すなかで「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致に岩手県の産学官と連携して積極的に取り組んでいます。ILとはInternationallinearColliderの略称で、全長31キロメートルから50キロメートルの地下トンネルに建設される大規模研究施設のこと。大型の線型加速器としては、世界最高・最先端の電子・陽電子衝突型加速器です。世界中の研究者が協力し、「世界に一つだけ」建設しようという計画が進んでいます。
このILCと同様に、盛岡商工会議所は盛岡ひいては岩手県や北東北経済圏を復興させることに、MORIO─Jという地域通貨ツールを有効活用しようと考えており、盛岡ValueCityという会社まで設立しました。