ひとりきりになった高齢妻が抱える「家無しリスク」
2人の生活から1人の生活になったのだから、生活費もコンパクトになるかもしれない。確かに、食費や水道光熱費は、半分とまではいかないにしろ、金額は下がるだろう。
ならば、多少の節約生活で乗り切れるかというと、必ずしもそうとは言い切れないかもしれない。最も懸念が大きいのは、住居費だ。
もしも夫婦が賃貸暮しで、なおかつ預貯金がそこまで多くなかったら、どうなるか?
夫婦で月20万円の年金収入があったときは、家賃を払っても生活が回っていたかもしれない。だが、夫が亡くなったらどうか? 年金収入が7万円減額したいま、2人で暮らした賃貸物件に住み続けることはできるだろうか?
総務省統計局『小売物価統計調査(2024年1月)』によると、東京の民間借家の1ヵ月の家賃は1畳あたり4,492円だった。2人用40平米のマンションの家賃は11.7万円。遺族年金と自身の国民年金、合わせて13万年のモデルケースの妻の場合、支払いは無理だ。
1人用20平米ほどのマンションなら、5万8000円程度。これなら月13万円の年金収入でもなんとかなりそうだ。だが、さらにここで新たな難問がある。
高齢者の入居を嫌う不動産会社、大家は非常に多いのだ。
「申し訳ありませんが、ご入居いただける物件はございません」
こんな対応が続けば、思わず「これからどうすれば…」と頭を抱えてしまうだろう。
株式会社R65が実施した『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題に関する実態調査』では、「年齢を理由に不動産会社に入居を断られた経験はありますか?」の問いに対して、26.8%が「ある」と回答。断られた回数は「1回」が最多だが、「5回以上」も11.9%となっている。
断られた人を年収別にみていくと「年収200万円未満」では27.7%に対し、「年収200万円以上」でも26.4%と同等だ。収入が高かろうが低かろうが「高齢者は家が借りづらい」というのが実情だといえる。
賃貸派の人は、将来「高齢になってからの家なしリスク」があるかもしれないことを、心に留め置いた方がよさそうだ。
いまは家族仲よく暮らしている人も、もしかしたら、1人きりで生きていく日が来るかもしれない。そのとき、自分がどんなリスクに直面する可能性があるのか、状況を把握したうえ、しっかりとシミュレーション・対策をしておくことが重要だ。
[資料]
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