(※写真はイメージです/PIXTA)

被相続人が認知症を患っていた場合、遺言書に効力があるのか、ないのかという点について、問題になることはよくあります。日暮里中央法律会計事務所・三上貴規弁護士が、具体的な事例をもとに、被相続人が認知症であった場合の「遺言書」の効力について、詳しく解説します。

母の遺言の無効を主張するには

では、純一さんが母の遺言の無効を主張するにあたって、どのような資料を収集すべきでしょうか?

 

収集すべきものとして、まずは、母の認知症に関する資料が考えられます。

 

たとえば、母の診療記録、医師の診断書、検査結果などです。本ケースでは、母は要介護認定を受けていたため、その際の認定調査票や主治医意見書を取り寄せることも考えられます。

 

以上のような資料から、母の認知症の重症度などを検討することになります。また、医学的な資料以外についても収集する必要があります。

 

たとえば、母の生前の日記やメモ、親族の供述などが考えられます。メールや手紙などが、母と純一さんの関係が良好であったことや母と弟が不仲であったことを裏付ける資料となることもあるでしょう。

 

以上のような資料から、母が弟に全財産を相続させる遺言をすることに合理性があるのか、遺言書作成に弟が不当に関与したのではないかといった点を検討することになります。

 

遺言の無効を主張する手続としては、遺言無効確認調停の申立てや遺言無効確認請求訴訟の提起などが考えられます。

遺言が無効だと証明するのは必ずしも容易ではない

遺言能力の有無は、諸事情を総合的に考慮して、事案ごとに個別に判断されるため、明確な判断基準が存在するわけではありません。

 

また、遺言が無効であることの立証は必ずしも容易ではありません。したがって、最終的に遺言が有効であると判断される可能性も見据えて対応する必要があります。

 

本ケースでは、仮に母の遺言が有効であるとすれば、純一さんの遺留分が侵害されていることになります。遺留分とは、被相続人の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分のことです。

 

遺留分を侵害された者は、侵害している者に対して、遺留分侵害額請求権を行使し、侵害額に相当する金銭の支払を求めることができます(民法第1046条第1項)。

 

そこで、純一さんが母の遺言の無効を主張するにあたっては、「仮に遺言が有効であったとしても」と留保を付した上で、弟に対して、遺留分侵害額請求を行うことも検討すべきです。

 

遺留分侵害額請求権には1年間という短い期間制限があるため(民法第1048条)、遺言の無効を主張するのと並行して遺留分侵害額請求権を行使しておかなければ、最終的に遺言が有効と判断された場合に、遺留分侵害額請求権を行使できなくなるおそれがあります。

 

以上のように、遺言の無効を主張する際には専門的な知識が必要となるため、専門家に相談することをおすすめします。

 

 

三上 貴規

日暮里中央法律会計事務所

弁護士

 

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