(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

●2016年はトランプ・ラリーで年末にかけて日本株は大きく上昇、金融株やバリュー株が好調だった。

●2017年も株高は継続したが、2018年は米中対立で株安、2019年は米利下げで株価は反発。

●トランプ氏勝利でも市場には免疫あり、政策の冷静な見極めが可能と思われ過度な警戒は不要。

2016年はトランプ・ラリーで年末にかけて日本株は大きく上昇、金融株やバリュー株が好調だった

今週のレポートでは、トランプ前政権で米国株日米長期金利、ドル円がどのように動いたかを検証しました。今回は日本株の推移を振り返り、改めて米大統領選挙でトランプ氏が勝利した場合の市場への影響について考えます。まず、日本株について結論から申し上げると、トランプ前政権の4年間において、基本的には米国株と同じ動きがみられました。以下、詳しくみていきます。

 

2016年11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利すると、大規模減税策への期待から世界的に株価が上昇し、「トランプ・ラリー」と呼ばれる現象が発生しました。日本でも年末にかけて日経平均株価、東証株価指数(TOPIX)とも2ケタ上昇し、業種別では国内の長期金利上昇などを背景に金融株が好調なパフォーマンスとなったほか、スタイル別ではバリュー株の上昇率がグロース株を上回りました(図表)。

 

【図表】前回のトランプ政権4年間における日本株の動き

2017年も株高は継続したが、2018年は米中対立で株安、2019年は米利下げで株価は反発

2017年の政権1年目も、トランプ氏が税制改革を推進するなか、日本株は堅調に推移し、日経平均、TOPIXの年間上昇率はともに20%近くに達しました。業種別の騰落率をみると、エネルギーや素材関連が上昇率の上位でしたが、この年は米国の大手ハイテク株が総じて好調であったことから、日本でも半導体関連銘柄の高パフォーマンスが目立ち、スタイル別ではグロース株がバリュー株をアウトパフォームしました。

 

2018年の政権2年目では、米中貿易摩擦問題が懸念材料となり、日本株は大きく下落、外需よりも内需が選好される動きがみられました。米中対立は2019年の政権3年目に一段と深刻化しましたが、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切ったことで、日米とも株価は上昇に転じました。特に米ハイテク株が急反発したことから、日本でも半導体関連銘柄が大きく上昇し、グロース株も好調でした。

トランプ氏勝利でも市場には免疫あり、政策の冷静な見極めが可能と思われ過度な警戒は不要

2020年の政権4年目は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、金融市場は世界的に大きく混乱しましたが、日米とも大規模な経済対策と積極的な金融緩和を実施し、株式市場は次第に落ち着きを取り戻していきました。この時期も、米ハイテク株の好調が続き、日本の半導体関連銘柄、グロース株が選好される流れが続きました。

 

結局、日経平均とTOPIXが年間で下落したのは政権2年目だけで、4年通年では上昇しました。当時はトランプ氏の言動に振り回されましたが、米ハイテク企業の成長や適切な米金融政策が、相場を支えた部分は大きかったとみています。トランプ氏勝利の場合、米中対立には要注意ですが、2期目ということで市場にも免疫ができており、経済・金融政策の冷静な見極めが可能と思われ、過度な警戒は不要と考えます。

 

(2024年3月14日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「もしトラ」に備える ~“前回のトランプ政権時代”に「日本株」はどう動いたか【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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