不動産会社から、年齢を理由に入居を断られた人、26.8%
株式会社R65が実施した『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題に関する実態調査』によると、65歳を超えて賃貸住宅の部屋探しを経験した高齢者は35.7%だった。
理由は「家賃の低い物件に住み替えるため」が36.6%、「適切な広さの間取りに住み替えるため」が32.2%、「子どもの近所に住み替えるため」が10.8%だった。一方で、「オーナーや不動産会社から立ち退きを促されたため」というケースも7.6%あった。
不動産会社から年齢を理由に入居を断られた経験について尋ねると、「ある」と回答した人は26.8%。断られた回数は「1回」が最多で44.8%だが、「5回以上」というケースも11.9%あった。
断られた人を収入別にみると、「年収200万円未満」が27.7%、「年収200万円以上」が26.4%となり、あまり大きな差はみられないように見受けられ、このことから、部屋の借りづらさは年齢がネックになっていることがわかる。
念のため、厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』から、現在の高齢者の年金受給状況をみてみよう。
厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給の老齢基礎年金を含めて14万4,982円。65歳以上の受給権者の平均年金月額は、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円となっている。
男性の平均的な年金額は月17万円弱、手取りは14.2万〜15.0万円程度だ。決して高額ではないものの、年金は必ず決まったタイミングで、決まった金額が振り込まれるのだが、それでも高齢者が家を借りるのは簡単ではない。
孤独死による事故物件化が不安な不動産会社、37.9%
同じく株式会社R65は、不動産を貸す側の声も調査している。『高齢者向け賃貸に関する実態調査』によると、「管理戸数全体のうち、高齢者入居可能な賃貸住宅の割合」をたずねたところ、「ない」が25.7%、「0~20%」が28.9%となっている。
また、直近1年間で年齢を理由に入居を断ったことがあるかとの問いには、28.3%が「ある」と回答。4社に1社以上が年齢を理由に入居を断っている。
高齢者の入居に伴う不安だが、〈入居前の不安〉としては「孤独死による事故物件化」が37.9%で最多。以降、「死後の残置物の処理」「家賃滞納」「火災」「近隣住民からの苦情」と続いている。〈入居後のトラブル〉についても、最多は「孤独死による事故」が21.9%と最多。以降、「家賃滞納」「死後の残置物の処理」と続く。
いっそ「老人ホーム」でいいのでは…
家を借りたい高齢者と、貸したくない不動産会社。二者間の距離はかなり遠いようだが、高齢者が賃貸を借りるためには、いくつかポイントがあるといえる。
●健康不安の少なさをPR
健康不安がないことを伝えれば、不動産会社の対応も少しや緩和されるかもしれない。もし不安がある場合も、いざとなったら家族がケアマネージャー等のサポートを受けられるようにしておき、その旨をしっかりPRしよう。
●金銭不安の少なさをPR
金銭面に不安がないことも重要だ。そのためには、年金額や貯蓄額を証明する書類を準備しよう。できる限り連帯保証人を立てるようにし、もし無理な場合も、入居希望者が賃貸住宅を借りやすくする「家賃債務保証」等を利用しよう。
●シニア向け物件を探す
最近はシニア向け分譲マンションなど高齢者専用物件も増えている。費用が高めなのが痛いが、このような物件に絞って探す方法もある。
●老人ホームも選択肢にする
思い切って老人ホームを選択するというのも手。「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」であれば、自宅とほぼ変わらない自由度の高い暮らしができる。基本的に外部の介護サービスを利用する「住宅型有料老人ホーム」は、比較的自立の高齢者が多い。自立していれば、利用料金を抑えることができるのも魅力だ。ただし、費用面には要注意。国土交通省によれば、サ高住の月額費用は平均10.8万円。初期費用は保証金(敷金)のみで、10万~30万円程度が相場。とはいえ、賃貸物件に引越しをするのとさほど変わらない費用で入居できる。
深刻化する高齢者の「住宅難民問題」も、住まいの選択の幅を広げれば、意外とあっさり着地がかなうかもしれない。
[参考資料]
株式会社R65『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題に関する実態調査』
THE GOLO ONLINE 編集部
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