相続の話し合いに「子の配偶者」は入れないほうがいいワケ
最近は親が長生きになっていますが、そのぶん認知症などを患ってしまうと、話し合いはできなくなってしまいます。なるべく早い段階で親子会議を開催することが必要です。まず、呼びかけるのはもちろん親です。子から提案すれば、ほかの兄弟姉妹から財産目当てだなどと疑われます。
時期は全員が集まりやすい盆や暮れ、ゴールデンウィークなどがよいでしょう。会議には子の配偶者は入れません。全く違う角度からの争いが勃発する可能性が高いからです。
親は事前に自身の財産について、すべて棚卸をして簡単な目録を作成、特に賃貸資産などがある場合は契約の内容、賃料条件などを記載しておくとよいです。最近はデジタル通貨のような、ネット上での取引も多くなっています。
ゴルフ会員権なども意外と家族はその存在に気づいていないものです。借金がある場合は、マイナス資産となりますので、借金がどの資産と結びついているのか、またその資産、例えば不動産がどれだけの価値があるのかを伝えておくとよいでしょう。
借金は相続開始後3か月が経過すると相続放棄できなくなりますので、早めにその存在をあきらかにしておくことです。ちなみに借金やいらない不動産があったら相続放棄してしまえば、と考えがちですが、相続放棄をすると、預貯金などすべての財産の相続を放棄することになります。
相続に関する権利をすべて放棄することになりますので、自分の子供や孫(代襲相続人)に権利が移転することもなくなります。
ただ、相続人である子供全員が相続放棄すると、直系尊属である父母が相続人となります。父母が拒否すると兄弟姉妹が相続人となりますので注意が必要です。また介護についてもある程度取り決めをしておいたほうがよいでしょう。
どのような状態になったら施設に入所するか、その場合はどの程度のグレードのところにするかなど、具体的に希望を伝えておくと子供が苦労しません。
共有しておきたい「親の人間関係」
家の片づけ、断捨離は、元気なうちに親が自分の手でやっておくことです。老老相続などに直面すると、すでに高齢者になった子供にとっては大変な重労働です。必要なものだけを残し、あとはきれいさっぱり。なかなか「言うは易く行うは難し」ですが準備しておきたいものです。
意外と子供が知らないのが、親が付き合っている人間関係です。最近は親戚筋などとも昔のように密な付き合いがありません。葬儀のときなどに突然現れて誰だかわからない、葬儀をお伝えすべき人に伝えていなかった、などという失礼なことのないようにしたいものです。
また、親だけが付き合っている医者、弁護士、税理士、ファイナンシャル・プランナーなどの連絡先を知る、できれば一度会っておくと相続時などに慌てずに済みます。
会議はなかなか一度では方向性が定まらないかもしれません。一度話し合って互いに持ち帰り後日あらためて話す。特に争いになりそうな部分、介護は誰がやる、現預金はどうする、不動産は、などそれぞれが一度冷静になって考え、家族全体の指針、方向性を一つにしていくことが必要でしょう。親子会議は家族にとって必須の会議なのです。
牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役
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