(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査といえば、個人事業主や富裕層といった一部の人以外には無関係に聞こえるかもしれません。しかし、実際には誰もが税務調査の対象なのです。今回「預金の取り込み」が税務署にバレた事例をもとに、多賀谷会計事務所の税理士でCFPの宮路幸人氏が相続における注意点を解説します。

明らかにおかしい…納得のいかないBさんは税務署に相談

しかし、相続税の申告後もやはり納得のいかないBさんは、思い切って税務署へ相談することにしました。

 

税務署からは

 

「お兄さんが親の預金を親のために生活費として使っていたのであれば、問題にはなりません。ただし、親の預金を自分の蓄えとしたしたり、自分の車を購入するなど、自分のために使っていたのであれば『預金の取り込み』に該当するため、相続税の申告漏れに該当します」

 

と教えられました。

 

Bさんは税務署の職員に、父親の預金が5,000万円ほどあったこと、年金額は個人年金等を含めると月30万円近く受給していたこと、また堅実で質素な性格であたったため、お金のかかる趣味や浪費癖もなく、年金額だけで月々の生活費は賄えていたはずであったことを伝えました。さらに、兄はずっと非正規雇用で働いており、亡くなる2~3年前ぐらいから父親に認知症の症状がみられ、その辺から兄の生活ぶりが派手になってきたことなどを詳しく説明しました。

 

Bさんから相談を受けた税務署は、その話に信憑性を感じ、亡くなった父親と子どもたちの預金通帳を遡って調べることに。するとたしかに、父親が亡くなる2~3年から、預金の引き出しが頻繁に行われているということが判明。税務署はBさんの相談が事実であるらしいという感触を得たため、相続税調査を決断しました。

Aさんに「相続税調査」の連絡が

相続税調査はAさんとBさんが立ち会うこととなりました。もちろん、調査官はBさんから密告を受けたなどということは話しません。

 

税務調査の際、Aさんは父親の預金残高が減っているのは、あくまで父親の生活費として使われたものであり、私が購入した車などは、あくまで自分の働いてきたお金やいままで貯めていた預金から支払ったものだとの主張をしてました。

 

調査官「お父さんに認知症の症状がみられるようになったのはいつごろからですか?」

 

Aさん「はっきりとは覚えてないけど、亡くなる2~3年ぐらい前からだったかな」

 

調査官「ちょうどその時期から、突然50万円単位で頻繁に預金がおろされるようになっていますが、これは何でしょう? それ以前は月に20万円ほどの金額で生活されていたようですが……」

 

Aさん「(なんで知っているんだ!?)それは、生活費として使いたいからと親父に言われて、俺が銀行から下ろした金だよ。親父は体を動かすのがツラそうだったから、代わりに俺が動いていただけ」

 

調査官「下ろしたお金と同じ金額が同日にAさんの口座に入金されていることが多いですね。これはそのお父さんのお金ではないですか? また、2年前に500万円というまとまったお金が下ろされていますが、これはがAさんが車を購入した時期と一致していますね」

 

Aさん「……」

 

税務調査の結果、およそ4,000万円の「預金の取り込み」が判明。相続税の追徴税額と悪質な財産隠しだと判断され、ペナルティとして重加算税を課されることとなったのでした。

 

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