前回に引き続き、地域通貨事業のモデル事例として、香川県高松市の「めぐりんマイル」について見ていきます。

市民の健康活動をめぐりんマイルがサポート

前回の続きです。

 

健康ウオーキングの事例は、翌年度には高松市から健康マイルの一部費用負担も実現しました。市民の健康増進は長期的に見れば医療費・介護費の削減につながるという理由です。

 

この健康活動でのめぐりんマイル付与は、めぐりんマイルの位置づけを地域コミュニティポイントに一歩近づけることになりました。それまでは、めぐりんマイルは買い物など商業活動で貯まることを基本としていましたが、健康活動をめぐりんマイルがサポートする取り組みで、めぐりんマイルは商売のツールではなく、地域活動をつなぐツールへの道を踏み出しました。

 

商店街・商工会からの理解も深まるきっかけになり、めぐりんマイル加盟店になることは個店での判断で加盟店になることが合意され、加盟店も500店舗以上に増えました。

利用頻度を向上させた「WAONカード」との提携

めぐりんマイルの特徴の一つに、大型ショッピングセンターを高松市で展開するイオングループと協業していることが挙げられます。めぐりんマイルは、イオングループの展開するWAONカードを利用しています。ポイントカードは独自に発行しても、なかなか財布の中に入れてもらえません。

 

日常生活で、よく使うカードであるWAONカードのフェリカポケットという領域を利用してめぐりんマイルを実現しています。めぐりんサービスは、WAONサービスのインフラを活用することで、独自カードの発行コストや、店舗端末もWAON決済端末に相乗りすることでコストを抑えることができています。別々のサービスが相乗りするための前提である、セキュリティはフェリカというICカード技術で担保されています。

 

めぐりんマイルを最初に導入した高松市の兵庫町商店街の理事長は、「今や、地域内の大型店舗VS商店街という構図ではなく、地域間の競争の方が重要であり、商店街も地域の価値を上げるためにはどうしたらいいかを考えなければならない。そのためには、大型店舗との協業も積極的に取り組むべきである。」という考えのもと、商店街のメンバーを説得していました。めぐりんマイルには、最初の段階では八つの市内商店街のうち兵庫町と田町商店街の2商店街が参加しました。

 

イオングループも、WAONカードや端末の提供はもとより、商店街のイベント協力、商店街とイオン店舗間のバス停留所の設置、フリーパーパーめぐりんりんのイオン店舗内での配布など、めぐりんサービスの拡大に関して多面的な支援を今も継続しています。

本連載は、2016年9月9日刊行の書籍『地域通貨で実現する 地方創生』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地域通貨で実現する 地方創生

地域通貨で実現する 地方創生

納村 哲二

幻冬舎メディアコンサルティング

本書は、地域活性化に興味のある人や自治体・企業・団体に向けて、地域活性化のための1つの有効な手段と思われる「地域通貨」を軸にした、事例紹介を含めた参考書・指南書です。 地域活性化は都市・地方の双方にとって喫緊の…

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